薬漬け医療の背景に
薬価差益の存在あり

 ここで、薬の取引は3つあることがわかります。1つ目は製薬会社と医薬品卸、2つ目は医薬品卸と医療機関・薬局、3つ目は医療機関・薬局と患者です。この3つの取引される価格のことを、それぞれ仕切価格、納入価格、薬価と呼びます。

 薬価は、薬価基準制度によって政府によって決定される価格ですが、仕切価格と納入価格は自由な取引によって決まる自由価格になります。医療機関は医薬品卸に、医薬品卸は製薬会社に値下げ交渉するのも自由です。

 ここで、医療機関・薬局に注目してみましょう。医療機関・薬局は、納入価格で仕入れて、薬価で販売することになります。したがって、ある薬1単位に対して、「薬価から納入価格を引いた」分だけ利益が出ることになります。これを薬価差益と呼びます。

 この薬価差益が、院内処方とも関係してきます。もし院内処方で薬を出していると、医師は薬価差益の大きい薬を選択して過剰に使用すればするほど、医療機関は利益を得ることができます。薬漬け医療の元は、この薬価差益と関係していると考えられるわけです。

 そこで、薬価差益が小さくなればなるほど、院内処方をするメリットは小さくなるので、薬価差益を小さくするように改定していくことがだいじになります。院内処方をするには、医療機関はより多くの薬剤師を雇わなければなりませんし、薬の在庫管理も面倒です。メリットが大きくなければ、院外処方に切り替えていくと期待できるのです。

 さらに、厚生労働省は、処方箋の作成料について院外処方の方を高くし、院外処方のメリットを高めるような政策も行いました。こうして医薬分業を進めていったのです。

 ところで、どうやって薬価差益を小さくすることができるでしょうか?薬価差益は、

 薬価差益=薬価-納入価格

 という式で表されます。この式から、「薬価=納入価格」であれば薬価差益はゼロになります。つまり、薬価を納入価格に設定すれば、薬価差益はなくなるのです。

 じつは現在の薬価基準制度でも、薬価を納入価格に合わせるようにして、毎年改定していきます。