ジェネリックが普及すると、特許が切れた先発薬は売れなくなります。そうすると、製薬企業は次の先発薬を開発し生産しなければ、収益がなくなります。

 つまり、ジェネリックが普及すればするほど、新薬開発に対して先発薬メーカーはプレッシャーがかかることになるのです。上述したとおり、日本の薬については日本の製薬企業の薬の開発力に大きな課題が存在しています。ジェネリックの普及は、日本の薬の問題を解決するための1つの重要な施策であることが理解できます。

 ただし、ジェネリックの普及は、先発薬メーカーの収益を下げるわけですから、新薬を開発した暁にはそれ相応の利益を与えなければ、割に合わないことも注意しなければなりません。

ジェネリック・メーカーで
不正が頻発する要因

 しかし、このジェネリックについては、近年社会を揺るがす大きな問題が発生しています。

 2020年11月に小林化工が製造した水虫薬の飲み薬に睡眠薬が誤って投入され、使用した患者さんの多くが健康被害を訴え、うち2名が死亡するという痛ましい事件が起こりました。この事件を皮切りに、品質データの捏造といった品質不正が多くのジェネリック・メーカーで発覚し、最大手である日医工や沢井製薬でも問題が明るみになりました。

 こうしたジェネリック・メーカーの不正を受け、各社には業務停止命令などのきびしい措置がとられました。しかし、ジェネリックの供給量が大きく減少した結果、医療の現場は薬不足となり、大きな混乱に陥りました。

 私たちの健康に直結する薬において、不正は決して許されるものではありませんが、このようなジェネリック・メーカーの不正頻発の背景には、やはり下がり続ける薬価の問題が関係しています。

 ジェネリックは安価であることから、利益率も決して高くはありません。そのため、ジェネリック・メーカーの多くは、多品種生産を余儀なくされます。大手のジェネリック・メーカーとなると、500品目以上の薬を生産しています。500品目の薬を同時に生産するとなると、その生産管理は大変複雑にならざるを得ません。