図7-1から、男女ともに一貫して上昇していることがわかります。このような5年生存率の上昇を見ると、医療技術が進歩し、がんは徐々に不治の病でなくなりつつあるように感じられます。

 そしてこの5年生存率の改善に大きく寄与しているものに、CTやMRIといった検査機器の技術進歩や、がん検診の普及をあげることができます。がん検診によるがんの早期発見が早期治療につながり、寿命の延長を可能としていると考えられます。

がん検診の問題点は
「見つけすぎる」こと

 しかし、検査と5年生存率の関係については、よくよく注意が必要です。極端ではありますが、次のような例を考えてみましょう。

 自覚症状により68歳でがんが見つかり、70歳でがんによって死亡した患者が一定数いるとします。もちろん、この患者グループの5年生存率はゼロ%になります。

 一方、もしこの患者グループが毎年がん検診を受けていれば、自覚症状がない状態の64歳でがんが発見されるとします。ただし、早期発見はできたものの治療効果はなく、やはり70歳で死亡するとします。このときの5年生存率は100%になります。

 この例では、死亡年齢は70歳のままなのに、がん検診によって5年生存率はゼロ%から100%に大きく改善することになります。治療効果はまったくなくとも、がんを早期に見つけるだけで、5年生存率は改善することになるのです。

 果たして、この例のようなことが、実際に起きているのでしょうか?じつは、がん検診によってがんの死亡は減るのかというと、かならずしも明確ではないことが近年の研究でも示されています。

 がん検診の普及でがんを早く見つけることができるだけで、5年生存率のような指標は改善することがわかりました。

 一方で、がん検診そのものにも問題があることが知られています。このがん検診の代表的な問題として、過剰診断があります。過剰診断とは、いわばがんを「見つけすぎる」ことによる問題です。

 がんには進行性非進行性の2種類があります。進行性のがんは、放っておくと命に関わるものです。