過剰診断がもたらす
身体および経済的負担

 さらなる検査は、放射線による被ばくの危険性もともなうことになります。もちろん、がんの疑いや確定診断されることで、精神的な負担もかなり高くなるものと思われます。さらには、治療ともなると、切除手術や抗がん剤などの化学療法など、身体的負担は決して小さいものではありません。このように、本来必要ではない検査や治療を受けざるを得なくなることによるコストは、とても大きいように考えられるのです。

 とはいえ、がん検診による早期発見がもたらすメリットはもちろんありますから、非常に悩ましい問題です。ただ、ここで理解しなければならないのは、検診をすればするほどよいわけではないということです。がん検診のデメリットも理解しつつ、適切ながん検診の関わり方を理解するべきだと考えられるのです。

 検査技術の進歩で、これまで見つけられなかったがんを見つけることで命が助かる一方で、見つけなくてもよいがんを見つけすぎてしまう問題についても、私たちはより理解を深めていく必要がありそうです。少なくとも、むやみに検査しすぎることの問題を、より理解していくべきだと思います。

 国立がん研究センターでは、行政が補助金を出して不特定多数の集団にがん検診を実施する「対策型検診」について、実施の有効性を評価しています。この評価結果が表7-1に示されています。

表7-1同書より転載 拡大画像表示

 ここで推奨グレードについて、AとBは「利益が不利益を上回る」、Cは「利益と不利益が近接している」、Dは「不利益が利益を上回る」、Iは「証拠が十分でない」ことを表しています。そしてAとBのみが推奨され、それ以外は推奨されないという判断になります。