最初は赤ちゃんからのサインを強く受け取り、動機づけの回路に配分する強力なまとめ役だったのが、やがて一種の阻害役になる。母ラットの過剰な母性行動を抑制し、子ラットの成長に伴って必要となる独立性や異なる学習環境というニーズに反応できるようになる。
齧歯類でも人間でも親の脳に起こる変化は持続する。イェール大学のヘレナ・ラザフォードらは脳波計を使って、赤ちゃんの顔を見ている時の59人の女性の大脳皮質の電気的活動を測定した。産後2カ月と7カ月の時点で測定を受けた女性たちの約半数は、過去に妊娠経験があった。
初産の母親と比べて、経験豊富な母親は赤ちゃんの顔への反応の平均振幅が低かった。脳がより効率的な処理をするようになったか、それほど強く反応しなくなったためと考えられる。
ラザフォードによれば、研究参加者から「最初の子供の時はとても不安だったけれど、2人目は全然違った」という話をよく聞いたそうだ。それは新米の親として経験した神経系の再編が反映されているからだと伝えれば、気持ちが楽になるのではと彼女は考えている。
初めての子育ては
次の子育ての土台になる
「初めての子育てはとても重要だと考えられます。なぜなら、2人目以降の子育てを考えると、その土台を築くからです」と彼女は言う。
2015年に息子のハートレーが生まれた時、私たち夫婦は幸運だった。長年、小児科医として愛されてきたスティーヴン・ブルメンタール医師が担当医だったからだ。
彼が初めてわが小さな息子を診察しに来てくれた時、私の身体は不安で落ち着かない状態だった。もちろん彼は息子を手際よく扱い、私たちの不安に耳を傾けてくれた。
私は母乳に苦労していた。ハートレーは上手く吸えないようで、私も母乳の出が悪かった。その上、息子はあまりにも小さかった。
ブルメンタール医師は息子を手のひらからもう片方の手のひらへと優しく転がし、あらゆる角度からじっくり診てくれた。そして、にっこり笑って私たちを見た。「誰がなんと言おうと、この赤ちゃんについて心配することは何もありませんよ」。それからの数カ月間、私の頭の中では何度も彼の声が響き、その言葉を信じようと自分に言い聞かせた。







