外国人は妖怪じゃないのに…ヘブン(トミー・バストウ)ついに来日!おトキが本能的に感じた“違和感”〈ばけばけ第21回〉

洋妾になればたくさんお金がもらえる

 冒頭で、蛇(渡辺江里子)と蛙(木村美穂)の出番で「とうとうくるのよ、運命を変えるあの人が」と浮足立っていた。

 旅館の旦那・平太(生瀬勝久)が松江に異人が来るという記事の載った新聞を読んでいる。そこにはレフカダ・ヘブンと書いてある。わざわざ県知事(佐野史郎)が呼び寄せた鳴り物入りの来日である。

 平太とツルは外国人を天狗(てんぐ)や河童(かっぱ)や鬼のようなものと考えている。そこには差別的な意味がこもっているような印象がある。トキは妖怪好きで詳しいから、異人と妖怪を十把一絡げに考えることはしない。それぞれの個性があることをわかっている。ただ、そこに確かな思想があるわけではなく、本能的なものだろう。

 なみ(さとうほなみ)とサワ(円井わん)は異人上陸に備え、英語の勉強をはじめていた。というか、なみが異人の洋妾(らしゃめん)になろうと、サワに英語を習おうとしていたのだ。

 洋妾になればたくさんお金がもらえると野心を抱くなみを、「恥を知れ」と勘右衛門(小日向文世)が叱る。彼にとって異人は「武士の時代を終わらせた諸悪の根源」だ。

 考え方の違うなみと勘右衛門が「勝負勝負」と木刀で向き合うが、「切る値打ちもないのう」と「出会え出会え」と近所の少年たちに斬らせようとする。武士の時代を小馬鹿にしていた子どもたちが、いつのまにか勘右衛門に鍛えられて、武士の真似をしている。銀二郎がいなくなったので、代わりに近所の子どもたちを鍛えていたのだろうか。

 その頃、司之介は、井戸のなかに1銭銅貨が落ちているのを見つけ、必死にとろうとしている。なんてさもしい。ときに明治23年。その年ジャストではないが、明治25年、大相撲の観覧料が35銭とある。ほか明治20年(1890年)では、そばが1銭だ(朝日新聞社「明治大正昭和値段史年表」より)。1銭銅貨でそばが1杯食べられたら儲けものではあるだろう。

 松野家にとって大事な1銭。トキはそれをある人からもらって、ある仕事を始めることにする。

 明治23年8月30日。運命の日、トキは使命を帯びて海岸に向かった。