
「いつかは聞かれるんじゃないかと思っていたが」
 簡単には仲良くなれない。
 調理中、ウメの目の調子がよくないことに気づいたヘブンは、早く医者に見せたほうがいいと心配する。「平気」と言っても「ノーノーイシャイシャ」としつこく、平太は「うるさいのう」といら立つ。
「こんぐらいでガタガタ(言うな)」と口にすると、梶谷(岩崎う大)がヘブンに通訳してしまう。なんで訳すかなあ。案の定、ヘブンは怒って「出ていきます」と、げたを履いたまま大きな音を立てて2階の部屋に駆け上がってしまった。
「あんたも余計なことを」と平太は梶谷を改めて見て、「だいたいあんた誰かね」とツッコむ。梶谷はあいさつもなく、勝手に花田旅館に入り込んでいたようだ。まったく失礼な新聞記者である。
せっかく焼いた目玉焼きは所在なげに取り残された。2つの目玉焼きの片方は黄身が濃く、片方は白身がかぶって、ヘブンの目のように見える。でもこれはたまたまこういうふうに出来上がったのだと、制作統括の橋爪國臣チーフプロデューサーは言っていた。
ヘブンはなぜ、目のことをそんなに心配するのか。自身の左目が見えないからだ。子供のときいじめに遭ったのがきっかけで左目に負傷したヘブンは「メ、ダイジ。メ、ダイジ」とウメに繰り返す。そこでウメはようやくヘブンの気持ちに気づいた。
 と、そこへ錦織(吉沢亮)がやって来た。ヘブンは慌てて逃げる。
 ヘブンが逃げるとしたら遊郭しかないと踏んだ錦織は遊郭へ。だが中に入れない。黒門の前で困っていると、トキが現れた。
トキに同伴してもらって錦織はおそるおそる遊郭街に足を踏み入れる。あからさまにいやそうな態度をとりながら、「君たちが暮らしているというのに申し訳ない」と相変わらず礼儀正しい。遊女に偏見があるわけではなく、どうやら遊女たちにアレルギーのようなものがあるようだ。
それを察したトキは遊女が彼の傍らにこないように歩く位置を代わる。男女逆転。まるで男性が車道側を歩くみたいな感じである。好きな人の絵を持ち歩いたり、エスコート感覚があったり、トキはどこか西洋的な考えを持っている。
 歩きながら、銀二郎(寛一郎)の様子を聞くトキ。
「いつかは聞かれるんじゃないかと思っていたが」
え……どういう意味?







