学歴の効力は「入社まで」
中原:なるほど。相談者もそういう見方をしているわけですね。
きれいごとなしで言うと、「学歴は、その人が初職で所属する会社の規模を決定する」ということは実際の調査データからもわかっているんです。学歴が高ければ大きな企業に所属し、低くなると中小・零細に偏っていく。そういう傾向があることは、学問的にも言えます。ですが、ただそれだけです。
びーやま:なるほど。学歴と関係するのは、あくまでも「最初にどんな大きさの会社に所属するか」だけでしかないわけですね。
中原:そうなんです。本来、入社した「あと」に大事になるのは、きちんと仕事ができるか、望ましい成果を残せるかですよね。そこでは学歴という物差しはもはや関係ないんです。なのに、いつまで経っても「この人は◯◯大卒だから無能だ」とか「あの人は◯◯大出身だから優秀だ」と考えてしまう。
ビジネスの世界では「成果を出すこと」が重要です。社会人になって「偏差値」だ、「学歴」だと言っていると、本質を見誤りますよ。学歴なんてものは、社会に出れば「イリュージョン」にすぎません。

Fラン大でも「投資効果」はある
びーやま:一方で、一緒にYouTubeチャンネルを運営している相方(高田ふーみん)は、僕以上の「学歴厨」なんですよ。現役で京都大学に入ったこともあって、ふだんから「Fラン大に入るくらいなら、大学なんて行かなくていい」と言っています。
僕も『17歳のときに知りたかった受験のこと、人生のこと。』を書きながら、「特別な思いもなくFランの大学に行くくらいなら、専門学校とかに進学して手に職をつけたほうがいいんじゃないか」と考えていました。こういう論調について先生はどう思われますか?
中原:事実に基づかない「個人的な教育論」ですね。Fラン大だろうとなんだろうと、やっぱり大学には行ったほうがお得ですよ。単純にお金に換算した場合の損得についても、学術的に論証されています。
びーやま:おお、そうなんですね。
中原:「大学に通うこと」を投資活動として捉えて、その費用と便益を分析しする研究があります。それによると、高卒と大卒の生涯年収を比べると、明らかに後者のほうが多い。その差分を大学に通うのにかかった費用で割ると、「大学に通うことの投資効果」が算出できます。
このとき、いわゆるFラン大であっても、利回り4~5%くらいの投資効果が見込めます。一流大学でも8~10%ほどなので、じつはFラン大に行くという判断は、決して「投資効果」が低いわけではないんです。ただし、あくまでもこれは、大学に行く意味を「投資」としてとらえ、金額換算した場合の話ですが。
びーやま:すごい。たしかに利回り5%の投資なんて、そうそうないですよね。
中原:しかも、高卒や専門卒の利回りが、Fラン大を上回ることはありません。ですから、生涯年収の多さを重視するなら、やっぱり大学には行っておいたほうがいいという結論になるんです。もちろん、金がすべてではないという大前提はありますが。