総予測2026Photo by Satoru Oka

関西を中心に、阪急百貨店と阪神百貨店を展開しているエイチ・ツー・オー リテイリング。2025年は大阪・関西万博やそれに伴うインバウンド需要の追い風によって業績は好調に推移したが、26年にはそれらの要因がなくなる。特集『総予測2026』の本稿では、阪急阪神百貨店会長でもある荒木直也社長に、業績維持のための施策について話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 片田江康男)

25年は前年並みの水平飛行
伸びしろ大きい海外顧客向けビジネス

――百貨店は各社共に新型コロナウイルス禍を乗り越えてから、業績は好調です。2025年をどう評価していますか。

 23年から振り返ると、24年まではコロナ禍からの本格的な回復時期で、リベンジ消費が活発でした。さらに24年は円安と、3月から7月にかけて実施されたラグジュアリーブランドの値上げによる駆け込み消費で、百貨店の売上高は今まで見たことがない業績が出ました。25年は24年並みの消費の強さで、水平飛行といったところです。

 もっとも、出来過ぎだった24年の反動で、25年度上半期は減収減益となりました。インバウンド売り上げは24年度が1298億円でしたが、25年度は約250億円減少の1050億円を見込んでいます。ただし、国内のお客さまの消費のパワーは思った以上に堅調で、なんとか持ちこたえています。株高や不動産価格の上昇など、資産インフレの影響もあるのでしょう。

――インバウンド売り上げを向上させる戦略は、年々重要性が増しているのでは?

 海外のお客さま向けビジネスは、当社が進めている「長期事業構想2030 Ver.2」の中で、伸びしろがある新しいマーケットに位置付けています。以前は、百貨店が海外のお客さま向けにビジネスをするときは、海外出店か越境ECくらいしかありませんでした。それが、今では海外のお客さまは当社のお店に来ていただけます。とりわけ関西地区は、東京と違いアジアのお客さまの比率が圧倒的に高く、リピーターも多い。それを踏まえると、“一期一会のお土産ショッピング”ではなく、数年にわたってリピーターとして来店いただけるお客さまとして捉えるべきです。

 海外のお客さまは日本のお客さまとも違います。沿線アッパーミドルのお客さまは、月に数回来店して食品を購入され、その来店の中で季節のファッションなどのお買い物をされる方が多い。しかし、海外のお客さまは、観光を兼ねて来日され、どちらかというとハレの消費をされます。

――インバウンド売り上げの全体に占める割合は、24年度は約19%まで伸び、業績に貢献しました。一方で、為替や高市早苗首相の国会答弁などの影響で大きく来店客が上下するなど、先が読めない不透明な側面もあります。どう捉えていますか。

26年、海外顧客向けビジネスについて、荒木社長は新たな二つのテーマを考えているという。どのような施策を打つのか。次ページでさらに詳しく語ってもらった。