たしかに息子の逮捕は俳優である母親を連想させ、その母親を起用した企業イメージにも影響が及びます。また同様の被害に遭い、苦しんでいる人たちへの配慮とみなすこともできますが、「それでも事件を起こしたのは、母親ではなく息子だ」という点から、賛否両論が巻き起こりました。
※注1 三浦ゆえ「高畑淳子さんを責めても何も解決しない」東洋経済オンライン、2016年8月26日
https://toyokeizai.net/articles/-/133287
自宅を直撃する取材に
正当性はあるのか?
性犯罪の加害者家族がメディアの過熱報道にさらされるケースもあります。
かつてNHK紅白歌合戦にも出演した人気ロックバンドの元メンバーが、性犯罪により12年間の服役後に出所し、2020年に再び逮捕されました。
この事件が報じられてすぐ、加害者が妻と住んでいた自宅にマスコミの記者が多数訪れ、近隣に取材を行ったことから、妻は自宅に住めない状況に陥ってしまったといいます。さらにこの自宅住所を詳細に掲載した新聞社や、ぼかし入りとはいえ住居の写真を掲載したウェブメディアもありました。
長年、この事件を取材していた月刊誌『創』の編集長・篠田博之氏は、ウェブメディアの記事で「家族の住所は暴くわ写真は載せるわというのでは、(マスコミは)いくら何でも自分たちの報道の暴力性に無自覚すぎる。犯罪者を叩いているつもりが、実際にはもうひとりの被害者でもある妻ら家族を攻撃しているという、その現実を自覚してほしい」と、過熱報道の危険性を指摘しています。(※注2)
また2021年、性犯罪更生支援団体の代表が、マッチングアプリで知り合った女性への強制性交等の容疑で逮捕されるという事件がありました。
この人物は過去にも性犯罪歴があり、刑務所内で性犯罪者を対象とした特別改善処遇のプログラム、通称R3(性犯罪再犯防止指導)を受けたのち、更生と社会活動に従事していました。
実はこの人物には出所後、同じキリスト教会で知り合い結婚した妻がいました。妻は夫の前科を知ったうえで、更生を支えようとしていた矢先の事件でした。
夫の再逮捕後、自宅にはテレビのレポーターや新聞記者が一斉に押し寄せ、妻は精神的に追い詰められる状況になったといいます。
※注2 篠田博之「性犯罪で再び逮捕された元ヒステリックブルーのナオキに警察署で接見した」Yahoo!ニュース、2020年9月24日
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/5a01bafcabfa1ad1af16a255182aa693b9b1d1a0







