「あなたは人生というゲームのルールを知っていますか?」――そう語るのは、人気著者の山口周さん。20年以上コンサルティング業界に身を置き、そこで企業に対して使ってきた経営戦略を、意識的に自身の人生にも応用してきました。その内容をまとめたのが、『人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』「仕事ばかりでプライベートが悲惨な状態…」「40代で中年の危機にぶつかった…」「自分には欠点だらけで自分に自信が持てない…」こうした人生のさまざまな問題に「経営学」で合理的に答えを出す、まったく新しい生き方の本です。
この記事では、読者から山口氏に寄せられた人生相談に対する回答を掲載します。(構成:小川晶子)

「この会社、もうダメだ…」組織が衰退するとき、二流は、何もせず従う。一流は、逃げる。では超一流はどうする?Photo: Adobe Stock

<質問>
多数派に流されないためにどうしたらいいか?

山口さんの著作では、多数派に流されず自分自身でよく考えることや、自分の価値観に従うことの重要性が指摘されていますが、なかなか実行できません。山口さんが多数派に流されないために意識していることがあれば教えてください。

<山口周氏の回答>

常に疑ってかかる

多数派に流されてしまうという悩みには2パターンあると思います。

1つめは、自分の意見や価値観が定まっていないために、多数派に流されるという悩みです。この場合に大切なのは、常に「疑ってかかる」ということです。ある程度思考のトレーニングを積み重ねなければ難しいかもしれませんが、「みんなが言っているから」ではなく、「本当にそうか?」と疑い、自分の頭で考えるクセをつけるようにしてみてください。

『人生の経営戦略』でお伝えしているのは、人生は自由であり、自分の意思で選択していくことができるということです。

「オピニオン」か、「エグジット」をしよう

2つめは、自分なりの考えや価値観は明確だけれども、多数派に反論することができずに流されてしまうという悩みです。この場合、その集団から抜けるというのが一つのテクニックです。

開発経済学者のアルバート・ハーシュマンは、衰退していく組織に対して人間の取れるアクションは、従う(忠誠)か、発言するか、離脱だと言いました。僕はよく「オピニオンかエグジットか」と言っています。

ある集団の中にいて、多数派の価値観に合わず、反対意見を表明するのもなかなか難しいというのであれば、残る手段は一つしかありません。エグジットです。抜け出すことで、多数派に流されずにすみます。

「反抗して、仲間を増やす」という第三の道

もう一つの「オピニオン」についてもお話ししておきましょう。

『人生の経営戦略』の前に出したのは『クリティカル・ビジネス・パラダイム』(プレジデント社)という本ですが、この本で言っているのは「反抗のすすめ」です。

反抗すると何がいいのか。アルベール・カミュは『反抗的人間』の中で「反抗を通じて我々は連帯する」と言っています。多数派の意見に違和感を持っているだけのときは孤独ですよね。でも、多数派が「こっちがいい」と言っているときに「私はそれはおかしいと思う」と反抗の狼煙を上げると、「私もそう思っていた」という人が集まってきます。そこで仲間ができるわけです。

2人より3人、3人より4人と、仲間が増えれば増えるほど反抗しやすくなっていきます。レジスタンス運動を作るということですね。

反対意見を表明し、仲間を増やすというのも考えてみてください。

(※この記事は『人生の経営戦略』を元にした書き下ろしです。)