長期で保有すべき会社を見分ける2つのポイント
ベイリー社は、決算書の数字の裏側にある、「定量化できない価値」を何よりも重視するのである。
そんなベイリー社が探し求めていたのが、サイバーエージェントだったのだろう。なぜなら、藤田晋氏が実践してきた経営は、ベイリー社の投資哲学そのものを映し出す鏡だったからである。
サイバーエージェントの歴史は、その経営がいかに長期的であったかを雄弁に物語る。インターネット広告事業で大きな成功を収めた後、同社はその利益を次々と新しい事業の苗を育てるために再投資してきた。
ブログサービス「Ameba」、ソーシャルゲーム事業、そしてインターネットテレビ局「AbemaTV」。
特にAbemaTVは、開始から何年もの間、巨額の先行投資によって赤字が続いた。短期的な視点しか持たない投資家からは、「会社の利益を食いつぶしている」と厳しい批判を浴びた。
しかし、藤田氏は「テレビの未来はインターネットにある」という長期的なビジョンを信じ、投資の手を緩めなかった。
この「未来への投資」を可能にしたのは、経営者の信念だけではない。短期的な赤字を許容し、長期的なビジョンを共有してくれるベイリー社のような投資家の存在があったからこそである。
成功する長期投資とは、未来を見据える経営者と、その未来を信じ抜く投資家との、いわば「忍耐の共同作業」なのである。
その関係性の重要性を、藤田氏は経営者の視点から、週刊文春電子版(10月16日)でこう語る。
《私はこれ(注:ベイリー社の哲学)を読んで、「長期ビジョンで」技術革新を怠らない」――この2つのワードに、長期で保有すべき会社を見分ける要点が示されていると思った。
(中略)これを逆に言えば、長期保有すべきではない会社は、「短期視点で」「技術革新をサボる」ということになる。》
では、なぜ多くの企業が「サボる」側に陥ってしまうだろうのか。







