大学教員は大体が研究さえやれれば満足なので、管理的な地位を積極的に望む人は少ない。そのなかでも、明らかに創造的無能に徹する人が何人かいた。Tさんはもっぱら自分がやりたい学外の活動に力を注いでいた。Sさんは多趣味でスマートで、自分独自の世界に浸ることを楽しんでいた(もっとも、こうした人は魅力的なので、職場で選挙があると選出されてしまうのが気の毒ではあったが)。

お願いごとを断る勇気と
引き受ける場合の姿勢

 逆に、職場で地位や評判を求めて自己アピールに余念のない人がいる。そして、多くの職場では、実際の業績や能力よりも、アピール力の方が幅を利かす。地位はそのようになりたくて仕方がない人に任せておこう。職場での地位など求めても、退職してしまえば何の意味もない。

 あなたにとって本当に意味のあるものとは何だろうか。それを追求しつつ、創造的無能の姿勢で余裕を持って、楽しく仕事をする方が賢明であると思う。

 真面目で良心的な人ほど、職場で便利屋として使われてしまう。無価値感を持つ「いい人」は、いっそうこの傾向が強い。誰かに頼りにされ、見事にやり遂げることで自己価値を得ようとするからである。

 余計な仕事を背負い込んで過重だと感じる。「なんで自分だけ」などと被害者意識が湧いてしまう。依頼を拒否したら自信がないと思われるのではないか、能力がないと思われるのではないか、認めてもらえないのではないか。そんな消極的な気持ちから余計な仕事を引き受けているなら、あなた自身のために断る勇気を持つこと。

 ただし、無理に「ノー」と言わなくていい。今の位置は、あなたのよさを生かした位置でもあるのだから。受ける場合は、「自分を成長させるため」と意識づけて行うようにしよう。

 現代の仕事の多くは、終業時間できちんとケリがつくというものではない。そのうえ無価値感が強いと、「より早く、より多く、より完璧に」という強迫観念にとらわれがちである。だから、どこかで割り切らないと仕事を終わらせることができない。

 別に早くなくていい、締め切りまでに完成すれば。たくさんの仕事をこなす必要はない、ほどほどのがんばりでできる範囲でいい。完璧を求めない、一応できあがればよい。こうした割り切る姿勢を身に付けたい。

仕事を割り切って効率良く
進めるために役立つ思考法

 そのためには、以下のような手立てが役立つ。

・締め切りを決める。

 この仕事は水曜日までで終わりにするとか、5時間かけたら終わりにするなど、自分なりの制限期日を決める。そして、その期日内に仕上げるように全力を尽くす。こうすると、時間の割に効率的に仕事ができる。