70歳以上になると、初期のがんや脳梗塞など、入院や手術を伴う病気に罹る可能性が高まります。罹った場合、多くは大きな総合病院で治療を受けることになります。するとご本人にしてみれば、「命を助けてくれた病院」であり、「自分の病気のことをわかってくれている主治医」となります。しかも総合病院は、内科をはじめ、整形外科や脳神経外科など、多くの診療科がそろっているので、1カ所であらゆる症状を診てもらえる便利さもあります。

患者を心身ともに支える
かかりつけ医の心強さ

 しかし近年、総合病院への患者の集中が社会課題となっており、厚生労働省では、総合病院とかかりつけ医の役割の明確化と、相互の医療連携を進めています。具体的には、一般病床数200床以上の大病院に初診で受診をする際は、かかりつけ医やほかの医療機関からの紹介状が求められるようになり、紹介状の持参がない場合は、初診料や再診料とは別に「選定療養費」を請求される仕組みに変わってきています。

 総合病院が負う役割は、精密検査や特殊な検査、重傷者や重病者の入院や手術、がんなどの専門的な治療、病状が急変した場合の救急医療などです。なお、総合病院の医師は、たいていは主治医と担当医に分かれます。主治医は患者の病気やけがの治療に関して主に責任を負い、特定の患者に対して医療サービスを提供します。担当医は主治医が率いる医療チームの一員として患者の治療を行い、主治医の指示や指導のもとで診療を行います。

 これに対してかかりつけ医は、入院や手術後の経過観察、高血圧や糖尿病など生活習慣病の継続的治療、病気の初期治療、日頃の健康管理や生活習慣の指導などを担っています。中には患者さんの日頃の悩みや家族関係まで把握し、家族の要望があれば往診や看取りに応じ、患者さんとその家族を心身ともに支えているかかりつけ医もいます。専門的な治療が必要になった場合は、適切な医療機関で治療できるように紹介状を書いてくれたり、介護保険の要介護認定を申請する際に必要となる「主治医意見書」を書いてくれたりもします[図1]。

[図1]医師や病院の役割の違いとかかりつけ医がいるメリット同書より転載 拡大画像表示