名医やトップドクターと呼ばれる医師、ゴッドハンド(神の手)を持つといわれる医師、患者から厚い信頼を寄せられる医師、その道を究めようとする医師を取材し、仕事ぶりや仕事哲学などを伝える。今回は第26回。主治医に代わって入院患者を包括的にかつ生活の視点で診る「病院総合医」として活躍し、その育成・活用を推し進めてきた園田幸生医師(済生会熊本病院包括診療部部長)を紹介する。(医療ジャーナリスト 木原洋美)
「無医村」と
揶揄される日中の病棟
一度でも入院した経験がある人なら、薄々感じているだろう。入院患者が主治医と顔を合わせる時間は極端に少ない。だいたいは日に一度(普通は外来が始まる前の朝の時間帯)の回診時ぐらいなもの。その機会を逸したら、具合の悪さや不安・不満は、看護師を介して聞いてもらうか、翌日の回診まで待つしかないことも多い。同じ病院内に主治医はいても、日中のほとんどの時間帯、主治医はいないことが多い。このような状況は「無医村」と揶揄(やゆ)されることもある。
というのも、医師たちは外来や手術、救急患者の対応に追われて、なかなか病棟に足を運ぶ時間が取れないからだ。
しかも高齢化が進む昨今、入院患者の大半を占める高齢者はもともと心不全を持っていたり、脱水、尿路感染や誤嚥性肺炎を起こしやすいなど。術後等の管理にも細心の注意と手間を要する。