このようにクマの出没は、まず地域の商圏に大きな影響を及ぼす。小売店が営業を短縮せざるを得ないとなると、特に山間部では買い物難民の増加も予想される。地方には、道の駅などに青果や特産品の直売所が多い。生産者と消費者をつなぐ大切な場所も、営業自粛に迫られるかもしれない。

 次に、労働への影響だ。札幌市の一般家屋の庭にクマが出没し、子どもが発見したというニュースも記憶に新しい。この時、札幌市内では臨時休校が相次いだ。子どもの安全確保のためにはやむを得ない。むしろ、そうすべきだったと筆者も思う。

 一方で、休校となると両親の負担は増えてしまうだろう。共働き世帯が一般的になった昨今、学校や保育園が休みとなると結構困るという家庭は多い。親が仕事を休まなければいけなくなった影響で、職場が人手不足になることも往々にして起きる。事務系でリモートワークができる人もいるにはいるだろうが、サービス業や医療・介護・福祉などのいわゆるエッセンシャルワークに従事する人も非常に多い。

 物流業においても、配達のルートを迂回する、配達自体の頻度を落とす・停止するなどの措置を行っている。こうした動きが本格化すれば、工業生産のサプライチェーンへの影響、自動車や電機関連など工場の生産稼働にも影響を与える。

 さらに言えば、最も身の危険を感じながら働いているのは、一次産業の農家や林業従事者だろう。すでに山間部では、作業の自主規制や短時間化をせざるを得ないという。ひとりだと危険すぎるので複数人での作業に変えるなどもあるそうだ。

クマ出没で地方経済が深刻ダメージ…農作物被害1.8倍増!登山や温泉、紅葉キャンプに足かせの波紋Photo:PIXTA