クマの出没による農業被害額自体も甚大だが、さらに恐ろしいのは、これが短期的ではなく、「クマのリスクまであるから厳しいな」などと農業従事者の意欲を失わせてしまうことだ。ただでさえ担い手が減っているのだから、中長期的な農業・林業などへの悪影響だけは避けたいものだ。
自衛隊出動の法改正は難しいのか
クマ対策、地方任せではいけない
ところで、クマの駆除活動における猟友会の方々へのインタビューを見た。仕留めるときに失敗することはできない。失敗したら、相当な確率で襲ってくるといった話は臨場感があって私も怖くなった。一方で、報酬が多額なわけでもなく、使命感のみでやる必要があるという話を聞いていたたまれない気持ちになった。とはいえ、ハンターへの報酬を地方自治体が全て負担するとなると大変なことも想像に難くない。
これだけのクマ被害がでているのだから、やはり政府が真剣にクマ対策を行うべきではないだろうか。警察が発砲するとか、自衛隊が出動するなどの法改正は難しいのかもしれないが、国民は今まさに困っている。いや、困っているレベルの話ではなくて、国民の生命が脅かされている。政府は、国民の生命を守る以上に必要な仕事などあろうか。
もちろん国も全くの無策というわけではない。例えば環境省は2026年度予算の概算要求で、クマなど「指定管理鳥獣」の被害防止に取り組む自治体への交付金として、37億円を計上した。25年度と比べて7億円の増加だ。
高市早苗首相と石原宏高・環境大臣には、クマ対策について国民に説明して、国の本気度を知らしめてほしい。そして、口先だけではなく実行力で国民を安心させてほしい。
今後はクマ生息地の調査と管理はもちろん、人と接する地帯のしっかりとした整備、ゾーニングが必要ではないだろうか。駆除の報奨金や被害補償も重要だが、事前の防止策も大切だろう。耕作を放置した土地の整備、果樹園の管理、そして廃墟への対応などだ。自然破壊にならないレベルでの草木の伐採なども行うべきだろう。







