すると、相手は短く「あっ」とだけ言って、帽子を取りました。とりあえずリングが見えるようになったので、「ありがとうございます、助かりました」とお礼を言いました。
希望を叶えるためには
感情より目的を優先する
もしこのとき、私が鬱憤を溜めたあげく「相手のマナーを正してやろう」「相手の行動が非常識であることを思い知らせてやろう」などと考えたら、私の言葉はもっととげとげしいものになっていたでしょう。
もし私が怒りを交えて「あんたの帽子のせいでぜんぜん見えないんだけど!まったく、何を考えているんだか!こっちも高い金払って見に来てんだよ?」などと言ったら、相手の方は怒って帽子を取ってくれなかったかもしれません。
こういうときに重要なのは、自分の中で勝手に問題を大きくしないことです。
『「わかってもらう」ということ 他人と、そして自分とうまくやっていくための言葉の使い方』(川添 愛、KADOKAWA)
このときの私にとって必要だったのは、ただ「相手に帽子を取ってもらうこと」だけで、相手の不注意や非常識を正すなどといった大それたことは私の仕事ではありません。
たとえ相手が何ら反省をせず、また別の場所で同じことを繰り返して他の人とトラブルになったとしても、私の知ったことではありません。
とにかくシンプルに、率直に、なおかつ丁寧に、そのときに相手にしてほしい具体的な行動だけを伝えれば、トラブルを回避しつつ自分の不満を解消できる可能性が高まると思います。
もちろん、相手によっては、きちんとお願いしたからといって聞き入れてもらえるとはかぎりません。そういうときは、運が悪かったと思うしかありません。
それでも、「私は自分の希望を叶えるために、必要なことはすべてやった。だから、今日はこれでいいんだ」と思えるのと、ただ何もできずに悶々として終わるのとではだいぶ違うのではないでしょうか。







