「俺は若い頃、長谷川(実雄)にいじめられた。内職して本を書いたこともある。何年も我慢したんだ。氏家(齊一郎・元日本テレビ会長)も読売から追放され、ルンペンを何年もやった。それを面倒見たんだ、俺が。途中ではそういうことがあっても、耐えることだ。人事は長いこと見ると先がある。君は余人をもって代えがたい。ケツまくる必要ない。君はまだ何年もあるんだ」
長谷川は社会部出身の編集局長であった。古い読売記者には、渡邉と最後まで対立して敗れ、かつての社会部王国の凋落を象徴する人物として記憶されている。
だが、岡崎以下のコーチ人事はすでに内示も済んでいる。
『記者は天国に行けない 反骨のジャーナリズム戦記』(清武英利、文藝春秋)
そう訴えると、「原に言うことを聞かせるやつを(ヘッドに)置いておいた方がいいじゃないか。江川は99.9%、受ける。彼をヘッドコーチにすれば、次は江川だとファンも期待するだろう。しかし、監督にはしないんだ。江川の庇護者は氏家だった。江川は監督にはしない。天と地がひっくりかえって人格者になれば別だがな」
そしてこう付け加えた。
「巨人は弱いだけでなくスターがいない。江川で集客を上げる。江川は悪名だが、無名よりはいい。悪名は無名に勝るというじゃないか」
コーチ人事を今になってひっくり返すその理由の1つが集客の道具なのか。江川のユニホーム姿に期待するファンを愚弄するものではないか。何よりも、岡崎を核にしたチームの育成方針など考慮されていないのが情けなかった。







