動物の感情を人間と同じように理解することはできませんが、クマもまた不安になったり、誰かに甘えたくなったりすることがあるということは確かです。クマの大きな体の奥にも、繊細で豊かな感情の世界が静かに息づいています。

ハチミツとサケが好きって本当?
クマの意外なグルメ事情

 クマの好物はハチミツとサケ。それは事実ですが、好きだからといって、がむしゃらに同じものばかりを食べているわけではありません。好物を口にするにしても、そこには本能に加え、選択や学習という意外に知的なメカニズムが隠されています。

 ハチミツは、マレーグマにとって貴重な糖分補給の手段です。ハチの巣を見つけると鋭いツメでこじ開け、そのなかにある蜜を舐め取るうえに、ハチの幼虫までしっかり食べます。ちなみに、クマの鋭敏な嗅覚は、数百m離れていても蜜の甘い香りを察知できるといいます。

 一方、サケはヒグマにとって代表的なエサのひとつです。遡上がはじまると、たくさんのヒグマが川辺に姿を現します。

 ただし、手当たり次第に食べるわけではなく、脂ののった個体を見極め、頭(脳)や皮など栄養価の高い部位を選んで口にします。一方で、産卵を終えてやせ細ったサケには目もくれません。カロリー効率を計算した、非常に賢い食べ方をするのです

 こうした食のスタイルは、親子で似ることがわかっています。効率のよい食事法を、子へ授けているといえるでしょう。つまり、クマは季節や状況に応じ食げるものを柔軟に変化させ、さらにそれを代々受け継いでいるのです