転職はゴールではない。君自身の求めるものに辿り着くための「手段」のひとつでしかない。

 重要なのは、「転職するかしないか」ではなく、次のような姿勢を持ち続けることだ。

*世の中を広く見る視野
*変化を恐れない心意気
*常に他の選択肢を探る好奇心
*自分の市場価値を知る冷静なリアリズム
*チャンスを待つ辛抱強さ

 こうした姿勢を持っていれば、転職という選択肢が自然に生まれることもあれば、同じ会社で新たな挑戦が見つかることもあるだろう。

毎年セルフ評価を続けた結果
30年以上同じ職場で働いていた

 少し僕自身の話をしよう。

 僕は毎年、会社の評価査定の時期に、自分自身の「棚卸し」をしていた。これは会社のためにする評価ではなく、あくまで自分自身に対してその成長度合いや現状の満足度をチェックするためのものだ。

 たとえば、こんな質問を自分に投げかけていた。

「この会社であと1年働くのが本当にベストな選択肢だろうか?」

「他の機会と比較して、いまのポジションのメリットとデメリットは?」

「この会社で新たな挑戦や成長のチャンスはあるのか?」

 転職することをデフォルトとしつつ、いまの職場にもう1年残ることの合理性を考える。

 このプロセスを毎年繰り返した結果、気づけば30年以上同じ会社で働いていた。

 引退したとき、海外の同僚たちからは「ネクスト・チャプターは何?」とか「ハッピー・リタイアメント!」といったポジティブなメッセージが届いた。

 なかには「テリーほど愛社精神の強い人間は見たことがないよ」という声もあった。

書影『成長の書』『成長の書』(妹尾輝男、講談社)

 正直なところ、毎年「棚卸し」をして転職を考えていた身としては、多少後ろめたい気もした。

 でもよく考えてみると、「この1年だけはここにいるのがベスト」と「確信犯的」に仕事をしてきたのだから、周囲からすれば愛社精神に溢れているように見えても不思議はなかったかもしれない。

 僕にとって、転職という選択肢を常に視野に入れることは、惰性に陥ることなく、自分を奮い立たせるために必要な方法だった。

 君も「転職」という選択肢を単なる行動ではなく、視野を広げ、勇気を持つためのひとつの「心構え」として捉えてほしい。

 新しい挑戦を恐れず、君自身の可能性を広げていくために!