人がいくらで売れるか
弾き出すのが仕事の快感

 転職エージェントには、悪魔と天使の2つの顔があります。

 2つの顔を知ると「違和感があるので担当を替えてください」と対応することができますし、転職後も仕事の相談に乗ってもらうようなパートナーを見つけられます。

 この記事では具体的なエピソードで、転職エージェントの素顔に迫ります。

 転職エージェントのMさんには、「悪魔の口癖」がありました。

 人がいくらで売れるかを弾き出すのが好き。当たると最高だね。

 Mさんは「このプロジェクトが終わったら退職して大丈夫ですよ。履歴書に傷はつきません」と言葉巧みに説得します。入社後3カ月は手厚くフォローする。「耐えられる人だけ残した方が教育コストがかからない」と考える会社を選ぶ。こうすれば「売り上げが続くうちは、会社から咎められることはない」と豪語していました。

 求職者からも採用企業からもクレームが入りそうなものですが、Mさんは営業成績が2年間トップを走り続けた転職エージェントでした。「悪魔の転職エージェント」はある意味、転職エージェントの仕組みをよく理解した戦略家なのです。

エージェントを悪魔に変える
「返金規定」という仕組み

 もちろん、多くの転職エージェントは悪魔ではありません。普通は罪悪感でこのような“売り上げさえ上がればいい”という仕事の仕方は続かないですし、SNSが発達している今なら悪評が広まるでしょう。

 ただ、重要なことは、転職エージェントは「求職者を食い物にできる抜け穴がある仕組みだ」という事実です。

 転職エージェントは求職者を採用企業に紹介し、転職した求職者が受け取る年収の30%から35%(変動あり)を、紹介料として受け取ります。契約書には「返金規定」があり、多くの場合は「3カ月以内(変動あり)に自己都合で退職した場合、紹介料の半分を返金する」と定められています。悪魔のエージェントが3カ月間フォローしたのはこのためです。