義父の「感謝の形」は
税制では測れない

 義父の政夫さんは、生前「真由美さんには本当に感謝している。何かしてやりたい」と周囲に話していたそうです。義父母をたった一人で長年介護してくれたことを思えば、その気持ちは十分に理解できます。税金のルール上は厳しい扱いでも、義父にとって5000万円は「お金」ではなく“ありがとう”という気持ちの証しだったのでしょう。

 真由美さんはこう語ります。

「お義父さんの思いを無駄にしないように、いただいたお金は住まいのリフォームに使いたいです。お義父さんが建ててくれたから。介護って、本当に報われないことも多いけれど、こうして“ありがとう”をもらえたことが何よりの宝物です」

弁護士がアドバイス
「介護の恩」は感謝の“かたち”で残す時代へ

「信じられない…」20年間を義父母の介護に尽くした60歳“長男の嫁”、葬儀後に届いた「封筒の中身」に絶句なかむら・けんしろう/虎ノ門法律経済事務所横須賀支店長 弁護士・税理士・司法書士。大学在学中に司法書士試験に合格。虎ノ門法律経済事務所にて、相続事件のほか、離婚事件・不動産事件・破産事件を主に取り扱う。

 最後に、中村弁護士に「同じように介護をしてくれた家族に感謝を残す方法」について聞きました。

「遺言書を作成して感謝の形を明文化することもおすすめです。介護してくれた家族への感謝を、遺言書の付言事項にて明記できます。遺留分(法定相続人の取り分)などを意識しながら安全な遺言書を残すためにも、弁護士と一緒に作ることが望ましいでしょう」

「また、生前贈与も可能です。契約書を交わすなどの注意点もありますが、暦年贈与を活用すれば年間110万円までの贈与なら贈与税が発生しません」

 介護を担う人にとって、家族からの「ありがとう」の言葉ほどうれしいものはありません。

 しかし、その思いが“お金”という形で残されたとき、税制や法制度の壁に直面することもあります。専門家の知恵を借りながら感謝の思いを“争いのない形”で残すことが、これからの相続のあり方なのかもしれません。

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