「財産は子どもに相続させるが、妻の老後が心配…」遺言書に何と書くべき?【行政書士が解説】写真はイメージです Photo:PIXTA

妻、または夫のどちらかが先に亡くなった時のことを想像すると、誰がパートナーの老後の世話をしてくれるのか、住まいはどうなるのかなど、不安なことだらけだ。自身も相続問題に見舞われた経験を持ち、2000件を超える相続遺言実務を行ってきた相続遺言専門行政書士の佐山和弘氏が、大切な人を守るための遺言書の書き方を解説する。※本稿は、佐山和弘『「本当に」使える遺言書の取扱説明書』(中央経済社)の一部を抜粋・編集したものです。

「残されたパートナーのために」
お互いを守る遺言書の条項例

 最近「夫婦相互遺言」が増えています。夫婦相互遺言は、読んで字のごとくお互いを守るためにお互いが書き合う遺言書です。ただ、遺言は、2人以上の者が同一の証書ですることができませんので(民法975条)、夫婦連名の遺言書は無効です。したがって夫婦それぞれが別々に遺言書を作る必要があります。

条項例(1)

第○条 私はすべての財産を妻○○○○に相続させる。

条項例(2)

第○条 私はすべての財産を夫○○○○に相続させる。

 夫婦相互遺言では、夫婦は親子に比べて互いの年齢が近いため、年下のほうが先に亡くなるリスクに備える「予備的条項」(相続させる相手が先に亡くなったとき等、万一に備えるための遺言)も書くことをお勧めします。

条項例(3)

第○条 私はすべての財産を妻○○○○に相続させる。

第○条 もし私より先に(または同時に)妻が死亡していたら、前条で妻に相続させるとした財産はすべて長男○○○○に相続させる。

 なお、条項例(3)で「または同時に」という文言を入れています。これはレアケースではありますが、不慮の事故等で夫婦同時に亡くなる場合に備えるためです。いずれの事態が生じても予備的条項があれば安心です。ただ、予備的条項については必ず書かないといけないというものではありません。