財産分与が不平等になってしまった時や、あぶく銭と勘違いして散財されてしまいそうな時……遺言書の末尾に、相続人たちに対する感謝の言葉や財産のストーリーを書き加えるだけで、心象はだいぶ違ってくるはずだ。自身も相続問題に見舞われた経験を持ち、2000件を超える相続遺言実務を行ってきた相続遺言専門行政書士が、残された人たちのハートに響く「付言」の極意を教える。※本稿は、佐山和弘『「本当に」使える遺言書の取扱説明書』(中央経済社)の一部を抜粋・編集したものです。
不仲だった息子との思い出を付言
「本当は自慢の息子だった」
付言例(1)
○○(二男)が小1の頃だったかな。当時、工場が不況で、もう畳もうかな、畳もうかなと毎日思っていたんだけど、救ってくれたのが○○(二男)の寝顔だったんだ。本当に可愛くて見るたびに『頑張らなきゃ!』と勇気をもらったんだ。それから中学生のとき『お父さん、絶対部活(野球部)は見に来ないで』と毎日言われてたよな。
だけど○○(二男)には初めて言うけど、最後の夏の大会をこっそり見に行ったんだよ。そしたら3年生の中で○○(二男)だけがユニフォームに背番号が無かったんだよな。補欠の姿を見られたくなかったから来てほしくなかったのかな。馬鹿だなあ、そんなこと気にするなんて。
でも、そんな○○(二男)が一番大きな声を出してたよな。マウンドに全速力で伝令に走って皆の肩を叩いて気合入れたり、三塁コーチのすぐ後ろでコーチよりも大きく手をグルグルと回したり、誰よりも輝いてたぞ!
監督さんに「息子さんはチームの宝です!」と言われたときは父親としてこんな誇りに思ったことはないよ。
そんな○○(二男)ももう30過ぎて、今どこをほっつき歩いてるかわからないが、たまには一緒に酒でも飲みたいよ。だって自慢の息子だもん。