前述のDさんは「黙っていたらわかんない」と言いましたが、管理職の人たちは、社員の考えを推測するのではなく、社員自身が、自分の考えを「発信する」ことを強く求めているようです。

 もしも、若手社員が、「こちらの考えをくみ取って欲しい」「察して欲しい」と思っているならば、「発信して欲しい」と考えている上司との間で、すれ違いが生じそうです。

 このように「発信する」ことの重要性が強調される背景には、社員に発信してもらうのは、それほど簡単ではないという意識があるようです。

上司に教えてもらう前に
自分なりにすべきこと

 次にメールによる発信についてもみておきましょう。

C メールで同じことを言っても、必ず返事や自分なりの意見をくれる人もいるが、私が主体的ではないなと思っている子はいつも返事がない。(製造)

 メールの返信をしないことは、主体性の無さの表れとされます。ネットワークを介したやり取りでも、「発信する」かどうかは、主体性の有無と結びつけられるようです。

 では、自分なりに考えたことを発信しさえすれば、主体性があると判断されるのでしょうか。どうもそれだけではないようです。

D 上司に言う前に当たり付けみたいなのをしてる子もいるんですよね。ヨコの繋がりとか使って、やれてる子は主体性があると思う。調べるだけじゃなくて、隣にいる誰かに聞くとか、よその部署まで行って聞いてきちゃうとか。(製造)

 自分で考えたことの見込みを確認するために、同僚や他部署などのヨコ方向の他者にも、上司というタテ方向の他者にも話をしにいくといいます。Dさんは次のように続けました。

D 割と正しそうだと思ったときに、「こういうテーマをやりたいんですけど」って上司に言ってくる。順番は別にどっちでもいいんですけど、どっちにしても言ってくる。ヨコも、上も。それは、すごい主体性があると思う。(製造)