カストーディアルキャストを経験したことは私自身にも変化をもたらした。この仕事をしてから、さまざまな場所で清掃している姿に出会うと「ありがとうございます」「お疲れさまです」と声をかけたくなるし、実際に声をかけるようになった。トイレ掃除も、拭き掃除も、モップがけも、そのたいへんさが実感としてわかるからだ。

 相手の仕事を理解することが、根強く残る差別意識を解消することにつながるのではないかと私は考えている。

清掃する
ゲストの中には、個室に入り、ドアも閉めずに、便座を上げないまま小用をする人もいる。便座に小便がかかるので掃除もいっそう手間になる。こういう人は家でも同じようにしているのだろうか。
声をかけられたのは各1回ずつだけ
ゲストが落としたポップコーンをスイーピングしたときや、マップを渡したり、道を教えたりしたとき、「ありがとう」と言ってくれるゲストは多い。だがレストルームではそうした言葉はなくなる。だから、レストルームで清掃中にその言葉を聞いたとき、ハッとした。その人は何事もなかったように立ち去った。自然とそういう言葉を言える人を尊敬した。たった2回だったのでそのときのことはよく覚えている。
東京ディズニー清掃スタッフが思わず立ち尽くした、中年女性からの「心ない」ひとこと笠原一郎『ディズニーキャストざわざわ日記』(三五館シンシャ)