PERは何倍なら「割安」か?

PERの使い方のキモは「比較」にあります。ニュースなどで「日経平均株価の平均PERは15倍程度」といった解説がされることがあり、これが一つの目安にはなります。

しかし、単純に15倍より低いから割安、高いから割高と判断するのは早計です。

鉄則は「同業他社」と比較すること

最も重要なのは、同じ業種のライバル企業と比較することです。

例えば、IT・ハイテク企業のように急成長が期待される業種は、PERが50倍や100倍になることも珍しくありません。一方、電力・ガスや銀行のように業績が安定(成熟)している業種は、PERが10倍前後で推移することも多いです。

市場の期待値が異なる業種同士を比べても意味がありません。「自動車業界A社とB社」「薬品業界C社とD社」というように、同じ土俵で比較することがPER活用の第一歩です。

「低PERのワナ」に注意

PERが極端に低い(例:5倍など)銘柄を見つけると、一見「お買い得」に見えます。しかし、それには理由があるかもしれません。

①将来の減益懸念:市場が「来期以降、この会社の利益は大きく減るだろう」と予測し、株価が先に売られているケースです。
②一時的な利益:不動産の売却益など、その年限りの「特別利益」によって純利益(EPS)が一時的に膨らみ、見かけ上のPERが下がっているケースです。

低PERだからと飛びつかず、「なぜこの株は放置されているのか?」と一歩踏み込んで考える癖をつけると、投資家としてレベルアップできます。

「成長性」も加味して判断する(PEGレシオ)

PERが高い銘柄も、単純に「割高」と切り捨てるのはもったいないかもしれません。

例えば、PERが50倍でも、EPSが毎年50%ずつ成長しているのであれば、数年後には現在の株価が妥当な水準になる可能性があります。

このように「成長率」に対してPERが割高か割安かを測る「PEGレシオ(ペグレシオ)」という指標もあります。

PEGレシオ=PER÷1株当たりの予想利益成長率

PERの次のステップとして、こうした指標も学んでいくと、より多角的な分析が可能になります。

※本稿は『最後に勝つ投資術【実践バイブル】 ゴールドマン・サックスの元トップトレーダーが明かす「株式投資のサバイバル戦略』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。