正解は「機動戦士ガンダム」!そんなのアリ?と大人がざわつく中学受験の深いメッセージ『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク

三田紀房の受験マンガ『ドラゴン桜2』を題材に、現役東大生(文科二類)の土田淳真が教育と受験の今を読み解く連載「ドラゴン桜2で学ぶホンネの教育論」。第123回は、「一見風変わりな入試問題」について考える。

無視してはいけない「文脈」

 東大入試本番に向けて、龍山高校の生徒たちは過去問演習に取り組む。生徒が解答した現代文や数学の記述問題が、先生たちにより容赦なく公開添削されるのだった。

 首都圏の中学入試も終盤を迎え、「来年度以降の過去問」になる各校の最新の入試問題も出そろってきた。有名校の入試問題は毎年と言っていいほど話題になりやすい。

 今年は、西の最難関・灘中学校(兵庫県神戸市)で出題された国語の文章が話題となった。パレスチナにルーツを持つ2人の詩人による、ガザの惨状をつづった2編の詩からの読解問題が出題された。

 首都圏では攻玉社中学校(東京都品川区)の社会の問題が話題となった。テレビ作品のタイトルを、あらすじから当てさせる選択問題だ。「新世紀エヴァンゲリオン」や「銀河鉄道999」など6つのアニメが提示され、「機動戦士ガンダム」が答えとなる。サブカルとはいえ、教科書や参考書に載っているような知識ではない。

 これらの問題はSNSやワイドショーなどで取り上げられることもある。入試問題が拡散され、受験関係者以外も巻き込んで多くの人がその問題について考えるのは決して悪いことではないだろう。だが、気をつけるべきは「入試問題と校風は表裏一体であり、『他でもないその学校が出題している』という文脈を無視してはいけない」ということだ。

入試問題は「学校からのメッセージ」だ

漫画ドラゴン桜2 16巻P23『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク

 先述の灘中学校の例で言えば、「灘は入試科目に社会がない(国語、算数、理科の3科目)」という文脈を踏まえる必要があるのではないだろうか。「たとえ入試科目になくても、社会的背景を前提知識として理解していることは、他教科に応用できる大事なことである」というメッセージかもしれない。もちろん、前提知識を直接問うわけではない純粋な読解問題ではあるが。

 攻玉社の例もそうだ。同校には中高合わせて部員数50人以上を誇るガンダム研究部があることを踏まえると、例えば「うちの学校のことちゃんと分かってますよね」というメッセージと捉えることもできる。一般的な知識問題と同列には評価しがたい。

 文脈を無視して問題だけが好奇の目にさらされると、出題校や受験生への的外れな・過剰な批判に繋がりかねない。校風や出題形式はもちろんのこと、その問題の点数が入試全体に占める割合なども考える必要があるだろう。

 何より、入試問題の主人公はあくまで受験生だ。入試問題は、1人の先生の思いつきだけで出題されるものではない。「このような生徒がほしい」という願いが込められた学校からのメッセージだ。その出題プロセスでは、校内での検討が綿密に重ねられていることは想像に難くない。下手に拡散されることを恐れて、学校側が出題において個性を出せなくなるのはもったいない。

 もちろん擁護しようのない「悪問」や問題不備がゼロとは言わない。だが、面白い問題や風変わりな問題を見かけたら、眉をひそめるのではなく「この学校はどのような思いでこの問題を作ったのだろう」と思いをはせてみるのがいいのではないだろうか。

漫画ドラゴン桜2 16巻P24『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク
漫画ドラゴン桜2 16巻P25『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク