PERを「定数」と捉えた先の視点

PERを(短中期的には)動かない「定数」として捉える。この発想の転換こそが、投資成果を分ける一つの鍵となります。

では、PERが「定数」であるならば、投資家は一体何に注目すればよいのでしょうか。

株価を動かす「真のエンジン」は何か

ここで、株価の基本式を思い出してみましょう。

株価=PER×EPS(1株当たり利益)

もし「PER」が動かない「定数」なのであれば、株価を上下させる変数は、「EPS(1株当たり利益)」しかありません。

注目すべきは「利益の成長」

つまり、その企業のPERが10倍であれ20倍であれ、それがその企業の「適正な定数」であるならば、株価が上昇するためには「EPS(企業が稼ぐ力)」が成長する必要があります。

PERが20倍の企業が、EPSを100円から120円に成長させれば、株価は2000円から2400円への上昇が期待できます。しかし、PERが8倍の企業が、EPSが50円のまま横ばいであれば、株価は400円のまま動かない(=塩漬け)可能性が高いのです。

「割安探し」から「成長探し」への転換

私たちが探すべきなのは、「PERが低い銘柄」ではなく、「将来的にEPSが伸びていく銘柄」です。

「PERが低いから割安だ」という思考停止から脱却し、「この企業は今後、利益を成長させられるか?」という本質的な問いに焦点を当てること。PERを定数として扱うプロの投資家たちは、日々その「利益成長のドライバー」を探しているのです。

※本稿は『最後に勝つ投資術【実践バイブル】 ゴールドマン・サックスの元トップトレーダーが明かす「株式投資のサバイバル戦略』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。