徹底した「法」の支配と
「成果主義」への移行
この旧来の「氏族制」という硬直化したシステムは、現代の組織における「前例踏襲」や「既得権益」の問題と通底するものがあります。商鞅は、国家の成長を阻害するこの構造に対し、法家思想に基づいた大改革を断行しました。
商鞅が目指したのは、属人的な「血縁」による支配ではなく、客観的な「法」による統治です。彼は、王族や貴族であっても例外を認めない、厳格かつ公平なルールを定めました。
「軍功」という明確な
インセンティブ設計
さらに商鞅は、それまで曖昧だった評価基準を廃し、「軍功(いくさでの手柄)」という明確な成果指標(KPI)を導入しました。これにより、出自に関係なく能力のある者が登用される道が開かれます。
「一族のため」ではなく「自らの功績のため」に戦う。この個人のインセンティブと組織の目標を合致させる仕組みこそが、兵士のモチベーションを最大化し、秦軍を最強の戦闘集団へと変貌させたのです。
現代のリーダーが学ぶべき「システム変革」の本質
秦の統一は、単なる軍事力の結果ではありません。それは、古い「血縁」というしがらみを断ち切り、「能力」と「成果」という客観的な基準に基づいたシステム(OS)自体を入れ替えたからこそ可能となりました。
皆さんの組織にも、成長を妨げる見えない「氏族制」(=古い慣習や属人的な評価)が残っていないでしょうか?
秦の変革は、組織の持続的成長には、痛みを伴ってでも既得権益を打破し、公平なルールと成果主義に基づいた「仕組み」を構築するリーダーシップが不可欠であることを、二千年以上経った今も強く示唆しています。
※本稿は『リーダーは世界史に学べ』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。















