企業倒産の現場で、「事業の灯」を絶やさぬ動きが広がっている。経営破綻後も事業譲渡や再建を通じて業務を継続する「事業存続型倒産」は3年連続で増加。人手不足や後継者難などの構造的な課題を背景に、「倒産=事業消滅」ではないケースが定着しつつある。(帝国データバンク大阪支社 情報部情報課長 内藤 修)
3年連続の増加となった
「事業存続型倒産」
秀和システムの出版物(帝国データバンク撮影)
深刻な人手不足も背景に、「倒産=事業の消滅」という状況が変化してきている。経営の行き詰まりから倒産に追い込まれた企業でも、さまざまな手法によって「事業」が存続するケースが目立つ。
帝国データバンクでは、会社の清算を前提とする倒産手続きである「破産」や「特別清算」を含め、倒産前後での事業譲渡や自主再建などによって、法的整理後も当該企業の「事業」が存続したものを「事業存続型倒産」と定義し、2024年度に発生した負債5億円以上の倒産(法的整理)を集計した。
2024年度の「事業存続型倒産」(負債5億円以上)は、前年度を4件上回る161件が判明し、3年連続の増加となった。他方で、全倒産(同)に占める事業存続型の割合(事業存続率)は32.9%となり、前年度から0.2ポイントの微減となったものの、約3社に1社で倒産後も事業が存続している状況にある。
他社への譲渡で出版事業を存続させた
船井電機の実質親会社の「秀和システム」
『はじめての』シリーズなどのコンピュータ・ビジネス書籍の出版を手がけ、2024年10月に破産した船井電機の実質親会社だった「秀和システム」(東京都江東区)は、負債約50億円を抱えて7月4日に東京地裁より破産手続き開始決定を受けた。
同社は、1974年12月に設立され、その後の休眠状態を経て81年に営業を再開。IT関連やビジネス関連を中心とする書籍出版を手がけ、『はじめてのWindows』や『はじめてのWord』など、パソコン入門書分野でシェアを広げていた。
近年は積極的なM&Aを通じてグループとしての業容を拡大し、2021年には子会社を通じて当時東証1部の上場企業だった船井電機(後に上場廃止)を買収した。







