高3の6月まで運動部で週5練習→東大合格した生徒が顧問に言われた「忘れられない言葉」『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク

三田紀房の受験マンガ『ドラゴン桜2』を題材に、現役東大生(文科二類)の土田淳真が教育と受験の今を読み解く連載「ドラゴン桜2で学ぶホンネの教育論」。第101回は、部活動と受験勉強の両立について考える。

志望校合格者が持つ「2つの特徴」

 東京大学現役合格を目指す早瀬菜緒は、夏休みに入り図書館で自習を始め、同じく東大合格を目指す大場隼人と出会う。大場は夏前まで野球部に所属しており、ニュースにも取り上げられた有名人だった。

 大学受験では、部活と勉強の兼ね合いはしばしば悩みの種になる。特に運動部だと、引退試合が高校3年生の時にある人が多いだろう。私自身も中高生の頃は陸上競技部に所属しており、週5回の練習を高3の6月まで続けていた。

 自分の周りの友人を見ていると、部活も最後まで続け、さらに志望校に合格している人には2つの特徴があるように感じる。

 まずは、メリハリがある人だ。例えば、部活が終了してみんなで帰路に着くまでの間、着替えや片付けをする時間がある。1人でささっと身支度をすれば、余った時間で勉強量を増やすことができる。もちろん帰り道は部活のみんなと一緒だ。

 家に帰っても、部活の疲労感のままにダラダラとゲームをするか、しっかり時間を決めて集中して取り組むかは大きな違いだ。部活という一体感が出る空間だからといって、家に帰ってからの部員の行動まで同じとは限らない。むしろ「みんな同じだろう」という甘えが落とし穴だ。

 次に、目的意識を持っているかどうかだ。むしろこれは、部活に対して当てはまるだろう。個人競技だと自分の種目に対して、集団競技だとチームの目標に対して、現在の課題を分析する。そして、解決に向けて具体的なアプローチを考える――部活で「自然と」この感覚を身につけられれば、このプロセスを勉強に応用できる。部活動の中で自分の意見をしっかり言える人ほど、「志望校」に合格している印象がある。

「勉強に専念する」は避けた方がいい

漫画ドラゴン桜2 13巻P115『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク

 同じ高校の陸上部に、今年東京大学理科一類に現役合格した後輩がいる。彼はU-18日本選手権で優勝したほどの実力者なのだが、勉強と運動それぞれの時間の使い方がとても上手で、自分に必要なトレーニングや授業をカスタマイズしていた。

 私の母校では高校3年生の授業は選択制になるのだが、彼はほとんどの生徒が受講する数学を受講せず、「自分の進度でやる方が理解しやすいし、トレーニングの時間も確保できる」と言い、自分の流儀を確立していた。

 部活動を続けるべきか、途中でやめて受験勉強に専念すべきかは悩みどころだ。個人的には、「勉強に専念する」という理由のみで辞めるのはあまりおすすめしない。なぜなら、途中で辞めるとなれば「勉強に専念する」という理由を周囲に言わなくてはいけないし、そうすると周囲から「この人は勉強に専念しているんだ」と見られる。

 本当は周囲がそんなことを思っていなかったとしても、「そのように思われているのではないか」と疑ってしまうこともある。これはかなりのプレッシャーだ。周囲の人が部活を続けている様子を見て、自分の選択を後悔することもある。

 もし辞めるなら、人間関係やケガなど他の理由があった方がいい。「辞めるしかなかったんだ」と自分に思い込ませる方が精神的には落ち着くし、切り替えやすい。

 私が部活動を最後まで続けたのは、中学生の頃、顧問に言われた言葉を覚えていたからだ。「陸上を勉強の言い訳にするな。勉強を陸上の言い訳にするな」。どちらからも逃げたくなかったから、その方がかっこいいから。こんな単純な感情でも、両立するには十分だ。

漫画ドラゴン桜2 13巻P116『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク
漫画ドラゴン桜2 13巻P117『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク