個人が一生涯で出会う人数は3万人と言われている。希少な事象の発生回数をモデル化するポアソン分布を用いて計算すると、田中宏和さんが生涯で少なくとも1人の同姓同名の田中宏和さんに出会う確率は約16.5%となる。

 日本で一番多い、約5300人の「田中実」の場合は約72%だという。同姓同名の出会いにおける「田中宏和」と「田中実」の運命を感じる興奮度の違いは、確率の数字からもわかるが、それ以上に大きいのだろうと想像する。

 タナカヒロカズ運動の集まりの磁力には、別のタナカヒロカズに出会わなそうで出会える絶妙の確率が働いていると感じるのである。

「さとうゆかの会」や
「わたなべゆうこの会」も存在する

 はじめて我々以外の同姓同名集団と会ったのは、2019年だった。

 佐藤由佳さんから「さとうゆかの会」を立ち上げたいと連絡をいただいた。「ゆか」については漢字不問とするとのこと。日本最大勢力の「佐藤」に、「ゆか」である。田中宏和よりは圧倒的に有利だろう。心穏やかならぬところだが、同姓同名好きのオッチャンとしては「喜んでお手伝いをします」とお返事をし、渋谷のラジオのスタジオに3人の「佐藤ゆか」でゲスト出演してもらった。

 やはり重要なのは名づけである。連絡をくれた佐藤由佳さんには「ほぼ幹事のさとうゆか」と「ほぼ幹事」を差し上げた。他のお2人には「アロハのさとうゆか」と「バナーのさとうゆか」と名づけてみた。ハワイ好き、バナー広告をつくっているというそれぞれの特徴からのネーミングである。

 その後2020年に「8人のさとうゆかの会になった」と報告を受けて以来、音沙汰無しで、同姓同名収集に飽きたのか、それとも多過ぎて混乱してしまったのか。タナカヒロカズの会を超えるポテンシャルがあるだけに、素直にがんばって欲しいと思っている。

 最近の注目株は「わたなべゆうこの会」だ。2020年の1月だった。いきなりTwitterでメンションが飛んできたのだ。投稿をチェックしてみたら、田中宏和の会にインスパイアされたニューヨーク在住の渡邊裕子さんが、シアトル在住の渡邉佑子さんと鎌倉在住の渡辺裕子さんの3人で鎌倉に集まった写真とともに、「わたなべゆうこの会」の発足を宣言していた。