なぜ「弱いつながり」が
キャリアを成功に導くのか

 弱いつながりがもたらす第一のメリットは前述したような「情報利益」です。

 様々なコミュニティと薄くつながっており、有益な情報に早くアクセスできます。異なるグループで交わされた会話の中で出てきたチャンスや機会についての情報もすぐに入ってくるのです。自分に有益な情報が自然と集まりやすい立場にいるということです。

 例えば、あるグループでプロジェクトが動き出したとき、「そういえばあの人も、こういうことに興味があったな」と紹介してもらえたりします。

 別のグループで得た情報が、思わぬ形で自分のキャリアに結びつくこともあります。実際に、私の知人が年に数回しか会わない人から、病院の人事の仕事のオファーが舞い込み、転職できたという例があったばかりです。

 第二のメリットは「キャリアの内省」です。これをキャリアリフレクションと呼びますが、弱いつながりは自分自身を振り返るきっかけをつくってくれます。 

 久々に会った人に「最近どんな仕事してるの?」と聞かれて、自分のプロジェクトについて説明していく中で、話しながら「自分の仕事ってこういう意味があったんだな」と気づくことがあります。また、その相手からのアドバイスやフィードバックを聞いて、「そういうやり方もあるな」と、自分のやり方を客観的に見直す機会にもなります。

 特に効果的なのは、異業種の友人との会話です。異なる分野で働く友人たちと話すと、その人たちの観点から自分の仕事についてフィードバックをもらえることがあります。

 例えば、「それ、病院と同じ状況かも」「広告代理店だったら、こういう部下にはこう対応するんだな」などと、異なる視点から気付かされることは多いものです。

 これは、強いつながりのグループでは得られない利点です。毎週会うような関係であれば、すでに知っていることが前提のため、自分の仕事について改めて深く話すことはありません。しかし、たまに会う人には、一から説明する必要があり、その過程で自分の仕事の意義やモチベーションを再確認できるのです。

 特定のグループに深入りしないことで、対立を回避でき、トラブルに巻き込まれにくい、漁夫の利を得やすい、オープンマインドでいられるなどの利点もあります。