そうはいっても訓練は厳しい。こんな苦しみはウクライナの人たちの苦しみに比べたら大したことはない、こんなことで音をあげたら申し訳ないと、必死で頑張った。面接時にハルさんを助けてくれたイギリス人がサポートをし続けてくれたことも励みになっていた。
短期間の訓練で
最前線に送られる義勇兵たち
訓練を終えたハルさんはウクライナ正規軍、特別第一独立旅団、第3大隊に配属され、偵察、待ち伏せ攻撃の部隊の一員として、ウクライナ東部のリシチャンスクの最前線へ送られた。そして、射撃訓練の成績が良かったので、仲間の推薦もあり狙撃担当に任命される。
「狙撃兵はカッコ良いというイメージがあって皆が希望するのですが、いざやってみると平均的な装備の2倍以上の荷物を持つ必要があり、一カ所で何時間も同じ姿勢で待っていなければならず地味です。他の兵士からは『ハルさんの守りがあるから俺たちは大丈夫だ』と言われ、自分が死ぬよりミスによって仲間が死ぬことが怖かったです」
砲弾が飛び交う最前線では絶えず死と隣り合わせだったという。ウクライナ軍は短い訓練期間で最前線に送ってしまう。それが義勇兵部隊に死傷者が多い理由ではないだろうか。
その後、部隊の指揮官が無能だったこともあり、無謀な作戦を強いられるなどして同僚の義勇兵が離脱した。ハルさんも部隊を辞めて、2022年11月から国際義勇軍の中核を担うジョージア部隊に入隊することになった。入隊後は訓練施設のゲートの警備を行っており、まだ本格的な戦闘には参加していないが、マムカ司令官はハルさんが日本人だということで、一目置いているようだった。
「日本人兵士は他の外国人に比べて規律がしっかりしています。かつて在籍していた日本人はトレーニングの後も本で学び、武器について、よく質問をしてきました。それに、その彼の部屋はいつも整理整頓が行き届いていて、他の兵士たちがそれに倣うようになったのです」







