前線で医療支援をする18歳のウクライナ人女性ソフィア前線で医療支援をする18歳のウクライナ人女性ソフィア(著者撮影)

戦況が泥沼化しているウクライナ戦争。現地では、優秀で将来有望な女性も前線で国のために戦っていることをご存じだろうか。7回もの現地取材を重ねたジャーナリストが、国のために活動する理由を18歳の女性ソフィアにインタビューをした。※本稿は、戦場ジャーナリストの横田 徹『戦場で笑う――砲声響くウクライナで兵士は寿司をほおばり、老婆たちは談笑する』(朝日新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。

18歳の若い女性が
ボランティアとして前線へ

 21時30分、ウクライナ東部クラマトルスクからの列車がキーウ駅に到着した。続々と降りる乗客の大部分が、過酷な戦場から休暇でキーウに戻ってきた兵士だ。1人の若い女性がプラットホームに降り立つと迷彩のレインコートを着た女性が近づき、強く抱擁して頬にキスをした。

「ただいま!ママ」

「おかえり、ソフィア」

 18歳のソフィアと彼女の母親でウクライナ軍将校のアーニャが会うのは2カ月ぶりだ。重い荷物を担ぎ、憔悴した面持ちで歩く兵士の波にもまれながら、娘の無事に安堵し、涙を浮かべる母。キーウで親子が一緒に過ごせる時間はたったの2日間だけなのだ。

 東部の激戦地、リマンで4人の男性衛生兵とともに救急搬送や医療支援をするソフィアは写真家になる夢を持っている。ウクライナ軍が攻撃ヘリコプター部隊のプロモーションビデオを制作した際に写真担当として製作チームに加わり、写真家デビューを果たした。

 初めてソフィアに会った者は、ケブラーのヘルメット、ボディアーマーを身に着けて、砲弾が飛び交う前線を走り回る彼女の姿を想像することは難しいだろう。ファッションモデルといっても十分に通用する容姿はウクライナ東部の最前線とは不釣り合いに感じられる。