松本が文春を訴えた裁判を取り下げたことについて、前者は「勝てた試合だけれど長引いて周囲に迷惑をかけることを避けただけ」と好意的に受け取っており、後者は実質的には負けなのだろうといった否定的な評価をしている。両者の意見はときにネット上で激しく対立する。

地上波ではなく YouTubeが
知名度を得る場所に?

 有料課金サービスの中でなら、批判の嵐から守られた場所で、ひととき体力を温存できる。

 松本のネットTVの中のみでの復帰は、良い悪いは別として、一つの時代の移り変わりを感じる。

 今の20代からすると想像できないかもしれないが、ほんの20年前にはまだ、インターネットの世界はアンダーグラウンドだった。テレビとインターネットで言えば、当然テレビの力が強く、それは揺るぎないものに思われた。

 YouTuberがこれほどの人気と影響力を持ち始めたのはここ10年ほどのことだ。人気のYouTuberが稼ぐ収益が莫大であることが知られ、無名の一般人にも自分の努力と運次第でチャンスがあることが広まると、参入する人は爆発的に増えた。

 それまではYouTuberをどこか「下」に見ていた業界人たちも、こういった状況を見て評価を変えないわけにはいかなかった。今では芸能人のYouTubeチャンネル開設も珍しくない。

 以前は有名人になることのゴールにテレビ出演があった。しかしこれほど多くの人がYouTubeを見るようになった今、テレビなどマスメディアの力を借りずとも知名度を得ることは可能である。

 テレビマンに編集されて仕上がりを自分で確認することができないテレビに出ずとも、自分のコントロール下にあるYouTubeでの露出を続けていれば、コアなファンとつながり収益も承認欲求も十分に満たされる。

 現代は「メジャーにならずとも有名になれる時代」だ。「有名になるとはバカに見つかること」と言う言葉があり、一時期ネット上でもよく見かけたが、文脈を読まずに明け透けに意見してくる層を「バカ」と評するのであれば、ある程度その層を避けながらファンに向けての露出を続けることができる時代になりつつある。