「子どもが寝ている時間と保育園に行っている時間しか書かない」

『ばけばけ』は江戸から明治という時代の変化、あるいは日本人のトキと西洋人のヘブンの異文化コミュニケーションにおいて、文化や価値観の相違を乗り越えていく物語でもある。ふじきさんの場合、子どもが生まれる前と後では生活や仕事の仕方が変わった。その転換をどう乗り越えたのだろうか。
「子どもが生まれて仕事の仕方はだいぶ変わったと思います。朝ドラを書き始めたのが去年(24年)からですが、子どもが生まれたのはもう少し前で。以前はとりあえず時間がたくさんあったので、そんなに朝早く起きる必要もないから夜中に好きなだけいつまでも書いていられました。
土日もフルで使っていました。僕はとにかく書くことが大好きなので、書く時間があればあるほどうれしくて書き続けてしまう。それは今も変わりませんが、子どもが生まれてからはそうもいかなくなりまして。
ちょうど、子どもが生まれた頃、コロナ禍があり、家の中にいる時間が増えたので、子育てをしながら、5分でも隙間を見つけて脚本を書こうとしていました。でも仕事と育児がごっちゃになっていると書けないんですよね。そこで子どもと向き合う間は絶対に仕事はしないと割り切ることにしました。
子どもが寝ている時間と保育園に行っている時間しか書かないと決めたら、そのほうが仕事に集中できるようになったんです。しかも、仕事の分量は変わっていないのに、仕事に費やす時間は多分以前と比べたら半分くらいになっているんですよ。やればできるものなんだなと思います」
ドラマで書かれている明治維新と比べるのは極論ではあるが、ふじきさんはそれまでと大きく状況が変わって思い通りにいかないとき、深く思い詰めず、フレキシブルに対応していくほうだという。
「言い方は悪いですが、こうなっちゃったら仕方ないと、流れのままに流されようというようなところが自分にはあると思います。仕事に関して言うと、子育てと両立しはじめたばかりの頃は、結構苦しくて、なんでこんなに書く時間がとれないのだろうと焦ったこともありました。そういうとき、自分を変えないと状況は変えようがないものなんですよね」
「流されよう」という考えが『ばけばけ』にも通じているように思える。







