「クレバーな人」と記者が感嘆、朝ドラ初出演の注目俳優・板垣李光人の現場での振る舞いがさすがだった板垣李光人さん 写真提供:NHK

朝ドラこと連続テレビ小説『ばけばけ』(NHK)に重要な役で出演している板垣李光人さん。若手実力派俳優として引っ張りだこだ。その一方、この9月までは、報道番組『news zero』(日本テレビ)の水曜パートナーを務め、社会問題とも向き合ってきた。今回、話を聞くと、社会と向き合ううえでニュートラルかつクリエイティブな姿勢が見えてきた。それがいまの人気につながっているのではないだろうか。(聞き手・構成/ライター 木俣 冬)

初めての朝ドラ、『news zero』を通じて、特別さを実感

『ばけばけ』は時代の価値観が変わるなかで生きていく人々を描いている。板垣さんが演じる雨清水三之丞は上級武士だった雨清水家の三男坊。跡継ぎではないため軽視されていると思って育ったが、ひょんなことから工場を任され、複雑な感情を抱く。

 そして時代の変化のなかで何もできない自分の非力さにも気づいて……。

 板垣さんにとって初めての朝ドラ。出てみて、その世間の反響の違いに驚いたと言う。

「初登場の回(第6回)は最後の1、2分ぐらいの短い時間でしたが、それだけでもたくさんの感想をいただきました」

「朝ドラの特別さを強く感じたのは、『news zero』でした。ご年配の方に取材をさせていただいたとき、ドラマは見ないけれど、朝ドラだけは見ているとおっしゃっていて。朝ドラとは本当に特別なものだなと感じて、出演できることがうれしかったです。あと実際に自分が出ているドラマをリアルタイムで見るのは夜に見ることが多いですが、朝、リアルタイムで見ることにもとても新鮮な気持ちを味わっています」

『ばけばけ』は明治維新の後、価値観が急速に変わっていく話。現代にも近いのではないかと言われている。板垣さんは2000年代生まれの20代前半。いわゆるZ世代。価値観が変わってからの世代だが、いまの世の中についてどう思っている?

「いまの社会に関しては、価値観が刻々と変化しているのは僕も感じます。いまの状況が当然、こういうものだとは思っていなくて。

 例えば、自分のいま生業にしている表現の仕事に関して、昔はどういうふうだったのかは、それに対して世間がどういう価値観で捉えていたり、見ていたりしていたかは、その時代に生まれていなくても、なんとなくは知っているつもりではあります。

 そうやっていろんなことがとどまることなく刻々と変わっていくのが常なので。いまは変わったというよりは変わりはじめているという感覚です」