さらに、「なぜ給料がそんなに高いのか?」と尋ねると、「美樹、グッドクエスチョンだ」と言って答えました。理由は、位が上の人間からヘッドハントされ、ヘッドハントされるごとに年収が上がっていくというのです。

 年収を上げるには、基本給を増やすよりは業績連動報酬を増やすほうが企業には好ましいので、業績連動報酬は転職者が増えるとともに増え、とくに上級役職者ほどその傾向は顕著です。

 新しく採用する会社はヘッドハントするために報酬を上げ、いま在籍している会社は辞めさせないため(リテンション)として報酬を上げる。このメカニズムで転職が増えると年収が上がっていくのです。

「日本も転職が増えないと年収は上がらないだろう」というのが話の結論でした。これは2001年のことです。いまも日本の現実はさほど変わっていません。

20代でガンガン出世する
中国の驚きの昇進事情

 次がさらに衝撃的なデータです。

「何歳で課長・部長になっているか?」を中国、インド、タイ、アメリカ、日本で比較しました。

図表:課長・部長への昇進年齢同書より転載 拡大画像表示

 日本企業の課長への昇進年齢は平均38.6歳、部長は44.0歳です。

 他方、トップの中国は課長昇進が28.5歳、部長が29.8歳です。日本企業は若手が抜擢されていないことが浮き彫りになりました。

 しかも、アメリカよりもアジア諸国のほうが早く昇進しています。昨今のアジアのパワーを感じます。

 3位のタイでも、課長昇進は30.0歳、部長は32.0歳です。日本の44歳の部長よりも、タイの32歳の部長のほうが高い給料をもらっている可能性があります。

 日本のサラリーマンは、課長になってから一定の年数を経過しなければ部長にはなれないという固定観念がありますし、あるいは評価のポイントの積み重ねがこのくらいあれば上に行くという見方で昇進を決めます。

 しかし、海外ではジョブで勝負します。そのポジションの仕事ができるかできないかだけで評価します。

 そもそも、海外では部長になる人間は早くから決まっているのだと思います。だから、幹部候補生には徹底的に投資するわけです。