東大卒のFIRE達成者が明かす
“リアルな親子関係”とは

 会社を辞めた当の本人ですら、シミュレーションを何度も重ね、「大丈夫だよな、大丈夫だよな?」と大きな不安を感じながらFIRE生活にシフトするケースが大半。それなのに、資産運用を理解できるはずもない子どもの立場で、親から会社を辞めたと聞かされるのですから、親の想像以上に大きな不安を抱えるのも無理はありません。

 そこでFIRE達成者がどう振る舞うべきかというと、どれだけ自分が不安でも、それを表に出さずに「大丈夫だよ」と胸を張って答えてあげることが重要になります。

 僕自身もFIRE達成後に子どもと会話をしているなかで、こうした経験をしました。

 会社を辞めてすぐ、小学生だった下の子に「お父さん、今日は会社行かないの?」と聞かれた時のこと。正直に「会社を辞めて、これから自由に生きてくことにしたよ」と説明したところ、「じゃあ、無職になっちゃったの?」と彼の顔はみるみるうちに不安そうな表情に変わっていったのです。

 大人同士で話すときは「FIREして無職になっちゃいましたよ」なんて軽口をたたくこともありましたが、この表情をされた時は心底焦りました。「いかんいかん。子どもに同じように話したら、こんなにも不安を煽るのか」と。

 FIREは親である大人の都合で決断した生き方です。その結果として、子どもの心に不安を残してはいけません。僕はFIRE達成後、趣味と実益を兼ねて執筆活動に力を入れることを決めていたので、慌てて「いや、作家になって本を書くのが仕事になったんだよ」と説明しました。

 すると、彼はしばらく考えてから「じゃあ、作家なら、無職じゃないね」と納得したように笑顔で言ったのです。彼の表情からは、心からの安堵が伝わってきました。