「パパのようなニートになりたい」
知人の娘が書いた“衝撃の作文”

 他のFIRE達成者にも共通して当てはまると思われますが、子どもたちが求めているのは「安心」です。特に、家にお金がどのくらいあるか知らされていない子どもは「仕事がある=お金に心配がない」「無職=お金が不安」という単純な発想に至りがち。彼らにとっては、毎日何かをしている親の背中を見ていることこそが、生活の安定を感じ、心の平穏を支えるための拠り所なのです。

 FIRE後の生活がどれだけ経済的に盤石であったとしても、その事実を日々の生活の中で実感させられなければ、子どもは親があれだけ望んだ「自由」を「社会からのドロップアウト」と誤解し、不安を募らせてしまいます。

 また、親の生き方は、子どもの将来の夢や価値観に直接的な影響を与えます。FIREによって親が手に入れた「自由」や「時間」の使い方は、子どもの目には良くも悪くも「生き方の身近な事例」として映ります。

 これはあるFIRE仲間の方から聞いたエピソードなのですが、FIRE達成後、娘さんが小学生の作文で「将来の夢」について「パパのようなニートになりたい」と書いて発表したそうです。

 経済的に自立し、誰にも束縛されない自由な生き方を選んだ親からすれば、FIREは人生の最高の選択肢かもしれません。しかし社会的には、娘さんが使った「ニート」という言葉は「生産性のない、社会貢献とはかけ離れた存在」としてネガティブなニュアンスを持ちます。

「娘が自分で稼いだお金でニートになるのは自由だけども、小学生のうちからニートになりたいと言うのはさすがにまずい」と、彼は完全にFIREして暮らせるだけの資産を築いたにもかかわらず、サイドFIRE(※)の形態をとるために仕事を始めたといいます。

※FIRE達成後、資産運用による収入と、副業などによる勤労収入の両方を得ながら生活するスタイル。