しかし、その子どもや孫世代にとっては、祖父母、曽祖父母とのつながりは親世代よりも薄くなり、その人たちが亡くなってしまえば、帰省する機会が自然に減るのは当然だ。

 全国の関係人口にアンケート調査を行った論文「現代日本社会における「関係人口」の実態分析」でも、若年層の多くは原体験としてのふるさとを喪失しており、それを持ちながら地方から移動してきた50代以上の世代とは社会背景が異なることが指摘されている。

若者世代の7割超は
首都圏で生まれ育った

 東京一極集中と出生地分布を分析した研究を踏まえ、もう少し詳しく見ていこう。

 国立社会保障・人口問題研究所の小池司朗・清水昌人によると、東京圏在住者の50歳代より下の世代で東京圏出身者の割合が高まり、両親とも東京圏で生まれた割合も増えている。

 60~64歳では東京圏生まれが59.3%だったのに対し、20~24歳では73.4%、25~29歳では79.3%だ。裏返せば、東京圏以外の地方出身者は、若者世代では2~3割しかいない。

 図1‐2で見ると、1990年代半ばから2010年代前半に生まれたZ世代や2025年現在の大学生は第4世代となり、親も本人も東京圏出身が中心になっているのがわかる。

図1‐2:仮想の家族における居住地と出生地の変化パターン同書より転載 拡大画像表示

 首都圏に立地する大学の入学状況でも明らかで、早稲田大学の一般選抜と大学入学共通テスト利用入学試験合格者の出身高校所在地は2024年度、関東が79.17%。関東出身者が2割程度だった1882年の創立当初と逆転している。

 早稲田大学も含めた東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県出身の合格者の割合は、東京大学が約6割、一橋大学が約7割で、東京工業大学と慶應大学は7割を超えるという。