浮かない表情の女性写真はイメージです Photo:PIXTA

地方出身の中高年にとっては、衝撃的なデータがある。いまの若者世代の約8割が、東京圏で生まれ育っているというのだ。そんな彼らは、地元愛が持てぬまま“ふるさと難民”化し、「隣人の顔を知らない」「挨拶はおろか会話すらない」と嘆く。都市部の若者たちが抱える孤独な内面に迫る。※本稿は、ローカルジャーナリストの田中輝美『関係人口の時代「観光以上、定住未満」で地域とつながる』(中央公論新社)の一部を抜粋・編集したものです。

地域に愛着を持てない
ふるさと難民が増加中

 首都圏の大学で関係人口(編集部注/離れている特定の地域に愛着を持ち、商品を買って応援したり、定期的に通って住民と親しくなったり、イベントやお祭りを手伝ったりする人)について講義した際、コメントシートに複数の学生の次のような記述があり、ふるさと難民の存在を実感した。

「私は埼玉県出身で地域へ特に思い入れがありません。地元には地域の交流やフリーペーパーもあります。小学校では郷土学習もやりました。それでもやはり郷土愛は生まれません。どうしてなのでしょうか」

「東京に小さい頃から住み続けており、高校は自分が住んでいる区外の少し離れたところに通っていたためか“地元愛”について聞かれた時、上手く答えることがいつもできないでいた」

 生まれ育った地域に愛着がない、と言うのだ。都市の若者世代を対象にした講演でも毎回似た反応が多く返ってくる。

 これは、若者世代は首都圏生まれ、首都圏育ちが大多数になっていることが影響している。

 1960年代、地方から都市へと大量に人が移動した。その世代にとっては、自分が生まれ育った出身地がふるさとであり、親や親族とのつながりもあった。