コア事業への資本投下が
日本企業を強くする

 基調講演後には、全体ディスカッションの時間が設けられた。

 モデレーターから、ディスカッションのテーマであるノンコア事業売却の目的について、22世紀も必要とされる企業となるために、事業の新陳代謝を促し、中長期的な視点でコア事業に経営資源を投下することにあると議論が提起された。これを踏まえ講演者3人より、「買い手が提示する金額は覚悟の表れ」(日戸氏)、「売り手のジレンマの解消には、柔軟性をもってどれだけアイデアを準備できるかがカギ」(赤池氏)、「事業撤退の基準はROICが一般的だが、売却に当たって買い手のビジョンを確認しておくことも必要」(鈴木氏)といった意見が寄せられた。こうしたやり取りを経て、25分間のテーブルディスカッションへと移った。

 3つのテーブルにゲスト各氏が分かれて参加し、活発な議論が展開された。その後の全体発表においては、「非効率事業の定義を決め、ノンコア事業に“シール貼り”を行った。構造改革の必要性を全社で認識したからこそ実施できた」といった発言や、「思った成果が出なかったM&Aについてはしっかりレビューを行い、課題の特定に努めている」といった報告があり、各社各様の実情が共有された。

 最後に、総括を求められた日戸氏が「M&Aはあくまで手段。『ありたい姿』をつくり込み、現状をバイアスなしに把握できれば、そのギャップからノンコアはおのずと明らかになるはず」と述べ、本セッションを締めくくった。

 ノンコア事業の売却は、単なる合理化でもリストラでもない。持続的成長に向けた、未来への布石なのである。

◉構成・まとめ|津田浩司、新井幸彦 ◉撮影|佐藤元一