「人が好きなので、新卒で人事になりたいです」
『ありのままの自分で、内定につながる 脇役さんの就活攻略書』は、特別な経歴や夢がなかった“普通の就活生”である著者が、1000冊以上の本を読み込み、自分に合った就活メソッドを築き上げ、食品大手を含む22社から内定を獲得した実体験をもとにした、どんな学生でも内定に近づく一冊です。「自己PRで話せることがない」「インターンに参加していない」といった就活に不安を抱く学生と、そっと背中を押したい保護者に読んでほしい就活戦略が満載です。今回は、新卒で人事になる是非について著者である「就活マン」こと藤井氏が特別に書き下ろした記事をお届けします。

新卒 就活Photo: Adobe Stock

「新卒で人事」はおすすめできない

新卒の学生さんから「人が好きなので、新卒で人事として働きたいです」「人と向き合える仕事がしたいです」と、人事職を目指す声をよく聞きます。

人の可能性を見つけたいという思いは、とても素敵です。

ですが、あえて最初にお伝えします。

新卒でいきなり人事職に応募するのは、かなり難易度の高いのでおすすめしません。

人事は「人を見る仕事」ではなく「事業を理解する仕事」

「人が好きだから人事」という志望動機は、ちょっと危険です。

人事という仕事の本質は、採用面接をするだけではありません。経営と現場の間に立ち、必要な人材像を描き、採用から育成、組織づくりまで担っていく仕事です。

つまり、人を見極める以前に、そもそも事業や現場がどう動いているのか、どんな価値提供で利益を生み出しているのかを理解している必要があります。

しかし、新卒で配属され、いきなり「評価をする側」に回ると、ビジネスの土台理解がないまま候補者を判断してしまうことになります。

面接官という立場は責任が重く、土台がないと「自分は何を判断しているのか」が見えにくくなってしまうのです。

それだと結果として「なんか人事の仕事、自分に合わないな」とか「人事の仕事、やっててもよく分からないな」とギャップが生じてしまいます。

「現場経験がない人事」が抱える弱点

現場で数字を追う経験、取引先と交渉する経験、部署の中で役割を持つ経験。こうした泥臭さが、人材の理解に深みを持たせてくれます。

逆に、現場経験がないまま人事になると、次のような状況に陥りやすいです。

・応募者の話に深く入り込めない。
・会社が求めている能力が、机上の理解のままになる。
・現場から「わかっていない」と認識され、信頼を得られない。

これらは本人の能力不足ではなく、経験の順番の問題です。

キャリアの広がりという視点で見たときのリスク

人事は専門職としての色が強い領域です。営業やマーケティング、企画職とは異なり、未経験から挑戦しやすいとは言えません。つまり「新卒で人事→他職種へ」は難易度が高いんですよね。

一方で「営業→人事」「企画→人事」は比較的多いキャリアです。

順番としては、まず現場で基礎力を身につけ、そのうえで人事にキャリアチェンジするルートの方が、将来的な選択肢が圧倒的に広がります。

最初の一歩をどこに置くかで、景色は大きく変わります。

まずは土台を作ることで、人事の深みが生まれる

人事という仕事は、誰でもできる仕事ではありません。どれだけデジタルが進んでも、最終的に人を選ぶのは人です。

だからこそ、最初に「働くとは何か」「会社とは何で成り立つのか」を体感することが、人事としての深さに繋がります。

僕自身、新卒で大手食品会社に入社し、現場の泥臭さを体験したからこそ、今の採用支援の仕事にも生きています。現場での失敗は、将来の財産になります。

最初のキャリアで土台を作ることは、遠回りではなく、大きな近道です。

人事を志望してはいけないのか?

ここまで読んで、もしかすると「人事を志望してはいけないのかな」と不安になった人もいるかもしれません。

もちろん、そんなことはありません。就きたい仕事があるというのは素晴らしいことです。

ただ、「最短で人事に行く」ことを目標にするより、「長く、深く、人と組織に向き合える人材になる」という視点で考えてほしいのです。

遠回りに見える経験が、結果として大きな武器になります。

また、自分のキャリアは自分だけのものなので、周りと比べず、自分のペースで未来を作っていけば大丈夫です。いま選考を受けている就活生も焦る必要はありません。

みなさんの就活を心から応援しています。

(本記事は『ありのままの自分で、内定につながる 脇役さんの就活攻略書』に関連する書き下ろしです