市長肝いりの図書館、
県と市の課題から生まれた図書館

 4つ目は、神奈川県の大和市文化創造拠点シリウスです。

 図書館の部分はTRC(図書館流通センター)が指定管理者として運営しています。図書館を中心に、文化ホールや生涯学習センター、屋内こども広場などが入った、市長が肝いりで計画した複合施設です。特に健康支援に力を入れていて、さまざまな世代の人が、施設を活用し、交流しながら、健康も良くなっていく、そのように設計されています。

 指定管理で複合施設を運営するとなると、どうしても競争原理が働いてしまうので、公共的なところにどこまでそうしたサービスを持ち込むかというのは非常に難しい面があると思うんですよね。結局、安くしてほしい、あれもこれもしてほしい、となると、安かろう悪かろうというサービスになってしまうところも多い。でも、ここはいい感じで機能しているようです。

 市民の方たちも、サービスを提供される側という意識ではなく、自分たちでつくっていく、「私たちの図書館なんだ」という意識が強い。市民発のイベントも多く、だいぶ交流が生まれていると聞きます。

 5つ目は、高知県のオーテピア高知図書館です。

 県の財政難や、自治体のダウンサイジングという課題に対応するため、高知県立図書館と高知市民図書館が統合してできた、新しい形の図書館です。広域連携によって、質の高いサービスを維持しようとする、今後の日本の図書館の1つのモデルケースとして注目されています。

 オーテピアという複合施設の中に図書館が入っていて、市の情報提供の拠点として、データベースの活用講座を行ったり、子どものコーナーでコンサートを開いたり、課題解決の支援として引きこもり相談会を開いたりと、ユニーク、かつ、非常にアクティブに活動しています。

――私のような一般人からすると、それがどれほど画期的なことか、よくわかっていないのですが、県と市の図書館が一緒になるというのは、すごいことなのでしょうか。

池谷先生

 そうですね。やはり管轄が大きく異なりますからね。県と市の職員が一緒に働くことは多くの課題が出てくると思いますし、市民からすればもちろん賛否両論はあると思います。ですが、これは1つの実験であり、財政難に直面する多くの自治体にとって、解決策を模索するための新たなモデルケースとして、注目すべき事例だと考えています。

――そのような図書館の統合は、今後、増えていくのでしょうか。

 全国的に見ればまだ数は少ないですね。長崎県でも同様の事例があり、埼玉県では県立図書館が3館から2館に集約されましたが、さらに1館に集約される可能性も耳にしています(※)。
※2012年に3館(熊谷、久喜、浦和)を閉館し、熊谷市に新設される複合施設への統合が検討されており、その一環として、2015年に浦和図書館が閉館。しかし、久喜図書館の閉館に対して激しい反対活動が行われており、計画は中断中。複合施設自体も基本計画の練り直しを行っている

――図書館の統合というのは、単にその自治体の図書館の数が減るということでしょうか。それとも、統合によって図書館の機能が強化されるのでしょうか。

 どのように統合を進めるべきか、という議論はまだ始まったばかりです。県立図書館が果たしてきた役割、つまり、「市町村立の図書館をどうバックアップしていくのか」。突き詰めると、都道府県が、市区町村に対して、何を提供できるのか。そうした根本的な役割分担の問題に突き当たります。

 そこには決まった答えはなく、それぞれの地域で最適な形を模索していく必要があります。その「最適な形」を、それぞれの自治体が真剣に考えなければならない時期に来ているのだと思います。

――財政難に陥る自治体が増える中、図書館は予算削減の対象になりがちです。そのような中、池谷先生は、今、図書館が抱える課題でもっとも大きな点は何だと思いますか。