助詞、助動詞は単独では意味をもちません。それに対して、自立語は、名詞や動詞、形容詞など単独で意味を表す語です。その意味の明白な部分が漢字で書かれ、意味の弱い部分が平仮名で書かれるのです。

 上の例文で、平仮名の「とても」「しまった」も、他の「日本」「災害」「起こる」に比べると、意味が少し弱いと言えるでしょう。要するに、漢字と平仮名の使い分けの大原則は次です。

 意味の強い部分に漢字を使い、意味の弱い部分に平仮名を使う

 ということです。人は文章を拾い読みするとき、漢字だけ追いかけます。それは、この大原則があるからなのです。

 しかし、漢字と平仮名の使い分けは絶対的ではなく、個人や状況によって異なります。そのゆれが生じやすい部分の例が、先の「あいさつ/きのう/くださる/ほしい」などです。こうしたゆれは、次のようにさまざまな理由から起こります。

・「挨拶」は2010年までは、常用漢字表に含まれていなかったため、「あいさつ」と平仮名で書かれることが多かった。現在は、それまでの慣習的な「あいさつ」を使う人もいれば、新たに「挨拶」と書く人もいる。

・「きのう」に関しては、「昨日」と書くと「さくじつ」と読まれる可能性がある。確実に「きのう」と読んでほしいときは平仮名が選ばれる。

・「くださる」「ほしい」の平仮名表記は、「読んでください・お読みください」「食べてほしい」のような補助的な用法で使われる。漢字表記は「お金を下さい」「食べ物が欲しい」のような本来の動詞や形容詞として使われるのが一般的。

ゆれやすい表記
漢字とひらがな、結局どっち?

 ただし、現実には、この使い分けが崩れている傾向が認められます。「お金をください」と本動詞でも平仮名で書かれることがあります。また、一般に使用頻度が高い語は、平仮名で書かれる傾向があります。「する」「ある」「いる」などがそれです。「ください」もよく使われます。そのため、平仮名書きが増えていると思われます。