こちらを敵視しているような人に議論を吹っかけられたときには、さっさと負けを認め、自分から議論の土俵から降りてしまうのがよいでしょう。優雅に負けてあげるわけです。

「なるほど、あなたの言い分にも一理ありますね」
「ふむふむ、あなたの考え方のほうがうまくいきそうですね」
「ほうほう、そう言われると、あなたの意見のほうが正しいように思います」

 こんな感じで白旗を挙げてしまえば、相手も拍子抜けするでしょうし、早々に議論も打ち切ってくれます。

 実は、このテクニックはベンジャミン・フランクリンがやっていた方法でした。フランクリンといえば「アメリカで一番人当たりの良い人」とも言われた人物ですが、若い頃にはだれかれかまわずに議論を吹っかけ、徹底的に論破して相手をやり込めては悦に入るような人だったそうです。

 ところが議論には勝っても、敵ばかりが増えてしまうことに気がついたフランクリンは、「これではいかん!」と思い直し、それからは議論をやめるようにしたといいます。

 実際、対人スキル(人間関係のスキル)の高い人ほど、議論をしないというデータがあります。

 ノースイリノイ大学のジョージ・ニューマンは、316名のビジネスマンに対人スキルを測定する心理テストを受けてもらってから、4人1組のグループを作らせ、人事の問題などについて議論をしてもらいました(※1)。

 その議論を分析してみると、対人スキルの高い人ほど、他のメンバーとの言い争いを避けようとすることがわかりました。

 人間関係がうまくいく人は、とにかく意味のない議論をしないのです。

 たとえ自分に敵意をむき出しにしてくるような人がいても、議論に乗ってはいけません。

 親が小さな自分の子どもと相撲をとるとき、本気でやろうとする人はいませんよね。「うわぁ~、負けたあ!」などと言いながら、自分からごろんと投げ飛ばされてみせるのではないかと思います。それと同じことをしましょう。

 それに、日本人は他の国の人に比べて、そもそも競争することを好みません。